エジプト北東部のシナイ半島で24日、イスラム教のモスク(礼拝所)が武装集団に襲撃され300人以上が死亡した事件を受け、同国のコプト正教会は事件翌日の25日正午、エジプト全域の教会で鐘を鳴らし、犠牲者との連帯を示した。
襲撃されたのは、シナイ半島北部アリーシュの西に位置するビルアルアベドにあるアルラウダ・モスク。金曜礼拝に来ていた礼拝者ら、子ども27人を含む305人(25日時点)が犠牲となった。礼拝中のモスクで爆弾が爆発した後、逃げ出してくる人たちを外で待ち構えていた数十人のテロリストが銃撃。負傷者を治療するためにモスクに向かう救急車までも攻撃した。
このモスクにはイスラム教神秘主義(スーフィズム)の信者が集まっていたが、スーフィズムは、イスラム教スンニ派の過激派からは異端と見なされている。エジプトでは、イスラム過激派の襲撃を受け多くのキリスト教徒が亡くなっているが、スーフィズムの信者はこれまで、キリスト教徒に対し共感を示していた。
英国コプト正教会のトップであるアンバ・アンジェロス主教はツイッターに、モスクへの襲撃は「さまざまな個人、コミュニティー、宗教に共通の無意味な破壊と苦痛」をもたらすとコメントした。
エジプト軍は25日、襲撃を行った武装勢力に対し、一晩にわたり、空爆と攻撃を行ったと発表した。「空軍は数時間にわたり、テロリストが使用する多くの前哨基地を排除した」という。
イスラム武装勢力に対する姿勢で支持を集めているアブデルファタハ・アル・シシ大統領は、襲撃者に対して「最大限の威力」で反撃すると約束した。来年の再選を狙うシシ氏にとって、治安維持は国民からの支持を受ける要件となっている。
世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事も攻撃を非難し、スンニ派最高学府であるアズハル大学(カイロ)の元学長で大イマム(イスラム教の指導者)のアフマド・タイイブ博士に書簡を送り、次のように述べた。
「私たちは、イスラム教徒の兄弟姉妹に対するこの襲撃を、人命をまったく無視するものとして非難しなければなりません。これは、礼拝者を標的とした非常に痛ましい襲撃です。私たちはあなたがたの傍らに立ち、共に歩んでいます。この凶悪な行為によって、私たちが分裂することはありせん。イスラム教の兄弟姉妹は、平和と帰依のためにささげられた礼拝の場で祈りをささげていました。その人々に対するこのような悲劇的攻撃を強く非難します」