ニュージーランド聖公会の初代主教による土地購入から174年を経て、ついに同国東部オークランドにあるホーリートリニティー大聖堂が完成した。10月28日には聖別式が行われ、国内外から約1400人が出席し、大聖堂の新たな門出を祝った。
英ロンドン出身の宣教師であるジョージ・オーガスタス・セルウィン(1809〜78)が、大聖堂建設のためにオークランドに土地を購入したのは1843年だった。しかし、大聖堂の礎石が据えられたのはその114年後の1957年。それから建設が始まり大聖堂の主要な建物は完成していたが、新しいオルガンの設置や「セルウィン主教チャペル」の建設などが残っていたため、2012年から「セルウィン・ビジョン」と銘打ったプロジェクトを始め、最終的な完成を目指していた。
セルウィン主教が、当時英国の植民地だったニュージーランドに出帆したのは1841年12月26日。同年10月に、ニュージーランドの初代主教として叙任されていた。オーストラリアのシドニーに短期間滞在した後、23人の宣教チームと共に42年5月30日にオークランドに到着した。
セルウィン主教はニュージーランドで26年間奉仕し、その後帰国してからは英中部リッチフィールド教区の主教を務め、78年4月11日に69歳で亡くなった。ホーリートリニティー大聖堂の聖別式には、リッチフィールド教区のマイケル・イプグレイブ現主教も参列し、オークランド教区のロス・ベイ主教が司式をした。
「セルウィン・ビジョン」プロジェクトは、オークランド教区のジョー・ケリームーア前首席司祭の指導の元で行われた。ムーア司祭は現在、カンタベリー大聖堂(英国)の大執事を務めており、ニュージーランドやオーストラリアなどの太平洋諸国の主教らと共に聖別式に参列した。
ベイ主教は、「セルウィン初代主教は、オークランド市民が礼拝をささげる場所として、大聖堂が用いられるビジョンを私たちに与えてくれました。私たちの世代が、そのビジョンの実現された姿を目の当たりし、ホーリートリニティー大聖堂を神にささげることができるのは、本当に素晴らしいことです」と述べた。
オークランド教区のアン・ミルズ現首席司祭は、大聖堂からオークランド市内を眺めることができることから、「(大聖堂は)教会のための場所であると同時に、オークランド市のための場所でもある」として、次のように述べた。
「セルウィン主教は、『教育的、社会的、慈善的、宣教的業(わざ)の中心』として用いられるようにと、今、大聖堂が建っているこの場所を購入したのです。主教には、地域的にも国際的にも多くの課題を抱えながら、喜びや悲しみを共有する私たちの時代が見えていたのです」
セルウィン主教チャペルは2014年に起工式が行われ、世界の聖公会のトップであるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー(英国国教会)も出席した。チャペルは昨年8月に完成し、新しいオルガンの設置や、新築のチャペル部分と従来からあった会衆席部分をつなぐ橋の撤去も行われた。
セルウィン主教の功績の1つには、ランベス会議の創設がある。これは、アングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)に所属する全世界の聖公会の主教が参加して行われる10年ごとの会議で、1867年の第1回以降、これまでに計14回開催されている。セルウィン主教の名前は、英国内ではケンブリッジ大学のセルウィン・カレッジやリッチフィールド大聖堂で毎年行われる聖職者や信徒のための神学講習などの名称に用いられており、ニュージーランドでも主教の名前を冠した地名や道路、建築物がある。