ハーベスト・タイム・ミニストリーズ(代表:中川健一牧師)主催の「第8回再臨待望聖会」が3日、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会(東京都新宿区)で開催された。札幌、沖縄、大阪、名古屋と巡り、最後の本大会となったこの日は、全国各地から600人以上が参加。イスラエルの宣教団体 ONE FOR ISRAEL でメディア宣教部門ディレクターを務めるエイタン・バール氏が、インターネットにより飛躍的に進むユダヤ人伝道について、また中川氏が「携挙(けいきょ)が起こるタイミング」と題してそれぞれ講演した。
ONE FOR ISRAEL は、クリスチャンとなったユダヤ人(メシアニックジュー)の証し「私はメシアに出会った」や、ユダヤ教指導者(ラビ)のキリスト教批判への弁証「ラビの反論に答える」などの動画をネット上で配信している。イスラエルでは海外のキリスト教団体による宣教が認められていないが、ONE FOR ISRAEL はイスラエルの市民権を持つユダヤ人とアラブ人の団体のため、活動が制限されないのだ。
バール氏によると、こうしたネット伝道により、イスラエルで今、大きな変化が起きているという。1948年の建国当時、国内にはわずか30人程度のメシアニックジューしかいなかったが、現在、国内には2~3万人おり、ここ3年の変化はさらに著しいという。
バール氏は1984年にテルアビブで生まれ育ったイスラエル在住のユダヤ人。15歳の時、海外でイエスを信じて帰国した後も、家族に明かせず、学校や町でもクリスチャンは他にいなかったという。バール氏はその後、2009年にイスラエル聖書大学を卒業し、13年に米リバティー大学で神学修士を取得。現在は米ダラス神学校の博士課程に在籍中でもある。
ただ、人口850万人のイスラエルで、現在も99・7パーセントがイエスをメシア(救い主)と信じていない。その理由として、福音を否定する正統派ラビの存在と、ホロコーストなど過去に経験した迫害によるキリスト教への悪印象をバール氏は挙げた。ユダヤ人社会では正統派ラビが思想的な「門番」として立ちはだかっているため、2千年にわたって福音への扉が閉ざされてきたのだ。
この門番を迂回(うかい)し、また強制的ではなくユダヤ人自らに考える機会を与えながらキリストを伝えられるのが、まさにネットを使った伝道。イスラエル人のパソコン所有率は100人当たり122台と世界1位で、スマートフォンの所有率も台湾に次いで2位。さらに、ネットの使用時間は米国人を6割も上回るほど世界一長く、高速ネット回線の普及率は99パーセント。イスラエルは「超ネット大国」なのだ。「今は、ラビを通り越し、スマートフォンを通してラビの子どもたちにも福音を伝えられる時代」とバール氏は言う。
ONE FOR ISRAEL による証しの動画は非常にクオリティーが高く、スポーツ選手や弁護士、成功したビジネスパーソンなど、影響力のある人が出演している。時間をかけて撮影するが、動画自体は見やすいよう5分程度に編集する。現在、証しの動画はヘブライ語と英語合わせて100本以上あり、ラビへの反論動画は150本もある。こうした動画配信は約3年前から始めたが、再生回数は証しの動画だけでも計1500万回を超える。動画を見て批判的なコメントをするユダヤ人も多いが、SNSの特性上、そうしたコメントによりかえって拡散することに。最近では全国放送のテレビ番組でも取り上げられたこともあり、今ではほぼ毎日、動画を通して救われるイスラエル人が起こされているという。
バール氏によると、ユダヤ人社会内部におけるイエスに関する議論はすでに2千年前に終わり、その後はもっぱら「ユダヤ人社会」対「キリスト教社会」という構図の中で議論が行われてきた。しかし最近は、ONE FOR ISRAEL の動画が急速に広がったことなどにより、ユダヤ人社会内部で再びイエスについて話し合う兆しが見え始めているという。
その一方、メシアニックジューへの迫害も増えている。殺害予告は日常茶飯事で、バール氏自身も自宅に投石されるなどの嫌がらせを受けたことがあり、4歳の子どももいることから、より安全な場所に引っ越したという。イエスを信じた若者が家から追い出されるケースも多い。そうした困難を語るパール氏だが、冗談も交えてその表情は明るく、祈りも「迫害がなくなるように」というのではなく、「迫害の中でも家族が守られるように」「彼らが救われるように」というものだ。
「これまでも世界中のクリスチャンから人道的援助などを受けてきたが、イスラエルを祝福する最高の方法は、イエスを紹介すること。イスラエルでリバイバルが始まりつつある。今後も日本を含め、世界のクリスチャンからの助けが必要だ」と語り、イスラエルのための祈りを求めた。
バール氏に続き、中川氏が「携挙」について解説した。中川氏は1947年大阪生まれ。一橋大学を卒業して日本マクドナルドに勤めた後、米トリニティ神学校に留学。帰国した79年から東京都町田市で開拓伝道を始めるとともにテレビ伝道に関わる。86年、ハーベスト・タイム・ミニストリーズを設立してテレビ伝道を展開し、2010年にテレビ伝道を終了してからは、弟子訓練などの働きを展開している。著書に『日本人に贈る聖書ものがたり』全4巻(文芸社)があり、イスラエルには何度も訪れている。
携挙とはキリスト教の教えの1つで、終末時にクリスチャンが空中に引き上げられ、キリストと会うこと。中川氏によると、終末論にはキリスト教界でもさまざまな解釈が存在するが、以下の3点では多くの同意が得られているという。①人類史上見られなかった苦難の時(大患難時代)が来る。②大患難時代後にキリストの再臨がある。③携挙が起こる。しかし、携挙が起こるタイミングについては、患難期前携挙説(pre-tribulationism)、患難期中携挙説(mid-tribulationism)、御怒り前携挙説(pre-wrath rapture)、患難期後携挙説(post-tribualtionism)の4つがあると紹介した。
中川氏自身は患難期前携挙説の立場だが、他の説についても時間をかけて説明しつつ、それぞれに対する疑問点などを聖書から指摘した。中川氏がそこで特に強調したのは、「携挙が起こる時期は誰にも分からないが、携挙は今すぐにでも起こり得る」ということ。中川氏はこれを「imminent(差し迫った)」という英単語で説明し、「携挙が『imminent』であることを理解するなら、実生活は大きく変化する。携挙を迎えるための準備は、日々キリストに従って歩むことだ」と伝え、最後に次のように語って講演を締めくくった。
「終末論に関する意見の相違が、信仰者同士の交わりを破壊してはいけない。イエス・キリストの福音を信じた者は、すべて主にある兄弟姉妹。救われている限り、全員が携挙にあずかる」
「再臨」は聖書の重要なメッセージでありながら、教会の礼拝説教でも詳しく触れられることが少ない。そこでハーベスト・タイム・ミニストリーズでは、日本の霊的覚醒、ユダヤ人の救い、メシアの再臨という3つのテーマを掲げて、この再臨待望聖会を2010年から始めた。過去には内村鑑三の再臨運動なども取り上げたが、主に海外のメシアニックジューを講師として招いている。来年は、米国メシアニックジュー同盟(MJAA)のラリー・フェルドマン会長が来日講演する予定。
聖会の講演内容は、過去の分も含め、DVDやCDで販売されている。今回はCD(テキスト付)のみで、12月初旬の完成を予定している。詳しくはハーベスト・タイム・ミニストリーズまで。