近年、再臨運動が全国的な広がりを見せている。第3回再臨待望聖会(ハーベスト・タイム・ミニストリーズ主催)が20日、東京都新宿区の淀橋教会で開かれ、教派を超えて約700人ものキリスト者らが一堂に会した。基調講演でハーベスト・タイム・ミニストリーズ代表の中川健一氏は、再臨運動について、「異邦人伝道とユダヤ人伝道は車の両輪」と語り、再臨運動がキリスト再臨の条件を整えるためにあることを強調した。
この聖会は、ハーベスト・タイム・ミニストリーズが主催し、2010年から毎年開いている。3会場での開催だった前回大会から規模を拡大し、今年は、沖縄、名古屋、札幌でのプレ大会に加え、大阪と東京で本大会を開いた。この日は、中川氏の基調講演に続き、19日に『内村鑑三と再臨運動』(新教出版社)を出版した愛知教育大学教授の黒川知文氏、イスラエル聖書大学学長のエレズ・ソレフ氏が講演した。
中川氏は、東日本大震災とそれに続く原発事故を「第2の敗戦」として「戦後の経済成長政策が負けた。物が豊かになれば人間が幸せになれるという世界観が負けた」と指摘し、国の価値観を根底から見直す必要性を訴えた。
また、日本の教会が、戦後の経済成長期の中で西洋から物質的成功思考の神学を受け入れたことにより、苦難の意味が喪失されたと指摘し、「苦難は神のご計画の一部。苦難こそ私たちの品性を練り、完成へと導く」と説いた。そのうえで、「この国に起こる試練は、すべて神の視点から見ると神のご計画の一部であって、実は今こそこの国に伝道のチャンスが来ている」と語り、「大事なのは、分かち合う真理を私たちがしっかりもっているかどうか」だと説いた。
中川氏は、「キリスト教とは世界観であり、歴史観。救いの歴史という文脈を理解する必要がある」と語り、聖書に預言されている千年王国、新天新地までの過程を説いた。キリスト再臨の条件として、救われる異邦人の数が満ちること(ロマ11・25~29)とイスラエルの救い(マタ23・39)を挙げ、異邦人伝道とユダヤ人伝道がともに必要だと強調した。また、異邦人信徒の使命について「イスラエルにねたみを起こさせること」(ロマ11・11)と説いた。
黒川氏は、大正期の再臨運動が第一次世界大戦やスペイン風邪の大流行、国内の米騒動、炭鉱騒動などの危機的時代状況の時期に重なり、現在も東日本大震災や民族紛争などの危機的状況の時期にあると指摘した。また、内村鑑三の再臨論と聖書観も現在の再臨運動のそれと基本的に同じであることを強調した。相違点として、現在ではイスラエルの建国やメシアニック・ジューの増加など、イスラエルに関する聖書の預言が、大正期より多く成就していることを指摘した。黒川氏はさらに、大正期の再臨運動が短期間において終結した原因を指摘し、歴史の教訓として「都市中心に、再臨批判者を攻撃せず、超教派の運動として聖書研究に基づき展開すれば、再臨運動は大きく広がる可能性がある」と結論した。
エレズ・ソレフ氏は、メシアニック運動がユダヤ社会とキリスト教社会の双方から迫害を受けてきた歴史的背景、宗教改革やホロコースト、イスラエル建国がメシアニック運動に与えた影響、近年のイスラエルにおけるメシアニック会衆の急速な増加とその課題などを解説した。ソレフ氏は、「一般のイスラエル人は、(メシアニック運動が)運動としてイスラエル全国に広がっているという認識をもち始めている」と語り、イスラエルにおけるメシアニック運動の広がりを強調した。