米カトリック教会の指導者らは、同国南部の国境を越えて入国しようとする子どもたちを対象にした移民制度の一部を、ドナルド・トランプ米大統領が停止したことに反対の声を上げている。
「中米未成年者(CAM)」プログラムは、バラク・オバマ前政権下の2014年に制定された移民制度で、米国に在住する両親に対し、中南米のエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスの3カ国に住む自身の子どもたちを2年間、難民または仮入国の資格で、米国に一時滞在させる請求権を認めるもの。ロイター通信(英語)によると、米国への入国を求めて、米メキシコ間の国境まで来た何万人もの保護者不在の子どもたちや家族に対する措置として制定された。
しかし、難民の入国一時停止を命じるトランプ氏の大統領令に伴い、CAMプログラムも見直しの対象となった。そして、米国土安全保障省(DHS)は8月16日、同プログラムのうち、仮入国資格の付与について停止を発表した。これにより、大統領令の発令以来、保留状態となっていた2700人以上の子どもたちの申請が取り消されることになるという。
米国カトリック司教協議会(USCCB)は、8月21日に発表した声明(英語)で、トランプ氏は「非常態的で危険を伴う移住に対する確実で安全な選択肢を切り捨てるという、不必要な選択をしました」と述べ、CAMプログラムの一部停止の決定を批判した。
USCCB移民委員会議長のジョー・S・バスケス司教(テキサス州オースティン教区)は、「私たちは、難民申請と仮入国申請の両方の選択肢を含むCAMプログラムを支援していました。このプログラムは、子どもたちが米国に移住し、家族と再会するために、合法的で組織的な手段を提供するからです」とコメント。「仮入国申請を終了することは、これらの子どもたちの安全を促進するものでも、政府による移民規制を助けるものでもありません」と付け加えた。
一方、バチカンは同日、各国政府に向け、移民や難民に関する20項目にわたる行動計画(英語)を発表した。教皇フランシスコは、移民や難民の個人的安全と尊厳が、国家の安全保障より優先されるべきものであることを示し、「万人の基本的尊厳のために、私たちは無許可で入国する人々のために別の解決策を模索しなければならない」などと述べていた。
「私たちは、子どもたちが保護されなければならないことを了解しています。子どもたちには母国に留まり、(そこで生活していく)機会を見つける措置が必要ですが、代替手段がない場合、自国を去り、安全に移民しなければなりません」。バスケス氏はそう述べ、「CAMプログラムの仮入国申請は、その解決策の一部として、か弱い子どもたちを移住させる法的手段を提供していました」と語った。
ロイター通信によると、CAMプログラムのうち、難民資格の申請については今後も継続されるという。
一方、トランプ政権は9月5日、幼少期に親に連れられて不法入国した若者の残留を認める移民救済制度「児童期入国移民送還延期措置」(DACA)の撤廃を発表した。DACAの対象者は80万人近くに上るとされ、複数の州政府がすでにDACAの維持を求めて訴訟を起こす方針を示すなどしている。
USCCBもまた同日、声明(英語)を発表。「DACAの撤廃は非難に値するものです。これは、DACAによって救済された若者やその家族に不要な恐れをもたらします」などと述べ、DACA撤廃に関する法制化が委ねられている米議会に解決を強く求めた。