過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭により故郷を追われたキリスト教徒たちが、間もなく避難先のクルド人自治区で、自分たちの礼拝所と呼べる大きな教会を持つことになる。
クルド系メディア「ルダウ」(英語、映像あり)によると、建設に約8年かかった聖ペテロ・パウロ教会のオープニング・セレモニーが6月29日に行われた。まだ完全に完成したわけではないが、約1300人を収容可能な規模の教会だという。ルダウによると、クルド人自治区で最大の教会となる。
クルド自治政府キリスト教部のハーリド・ジャマル部長はルダウに対して、「完成すれば、これは中東における同様のプロジェクトとしては最大規模となるでしょう」と語った。
同教会が建設されたのは、クルド人自治区の主都アルビルの北側に隣接するアンカワ。もともとキリスト教徒が多く住む地域で、29日のオープニング・セレモニーにもアンカワ出身者が多く出席した。一方、ISに占拠されたモスル周辺や首都バグダッド、ISにより故郷を追われたイラクやシリアの他の地域の人々も出席した。
シリア難民であるミリアム・シルマンさんは、興奮した様子でルダウに対し、「この教会のことでとても幸せです。いつも祈りにここに来るでしょう」と語った。
カルデア典礼カトリック教会のアルビル大司教バシャー・マッティ・ワルダはルダウに対し、「クルド自治政府からの支援を受けてこの教会を建設することは、キリスト教徒とのつながり、キリスト教徒のための支援があることを示すメッセージなのです」と語った。
建設プロジェクトを指揮するアシュール・ジャルジス氏は5月、ルダウに対して、「このプロジェクト自体は数年にわたって進められており、キリスト教研究と言語のための学校も併設する予定です」と説明。アルビルと周辺地域の歴史をも反映する現代建築になると語っていた。
ルダウによると、クルド人自治区には過去数年間、ISを逃れて避難してきたキリスト教徒が大量に流入しており、増加するキリスト教徒に対応するため、自治区内に教会を増やす計画があるという。クルド人自治区には現在、127の教会と24の礼拝堂がある。
聖ペテロ・パウロ教会の開所について、キリスト教迫害擁護団体の国際キリスト教コンサーン(ICC)は、ウェブサイト(英語)でクルド政府を称賛した。
「この教会は、家や教会を失ったキリスト教徒が歓迎されていると感じることのできる場所となるでしょう。それはまた、キリスト教徒たちへのクルド政府の支援を示しています。非常に多くの痛みを経験した後で、行く場所のないキリスト教徒はクルディスタン地域に故郷を見ているのです」