ヤジディ教徒が多く住むイラク北部のシンジャルで、1600人以上の遺体が発見された。過激派組織「イスラム国」(IS)による犠牲者とみられており、今後調査が進むにつれ、さらに多くの遺体が見つかる可能性がある。
シンジャルのマーマ・ハリール市長はクルド系メディア「ルダウ」(英語)に対し、ISに殺害されたヤジディ教徒の埋葬地に関する調査チームが、同市内の31カ所で計1646人の遺体を発見したと語った。
ISの戦闘員らは2014年夏、イラク北部のヤジディ教徒の居住地域を占領した。戦闘員らは組織的に女性と子どもたちを男性から引き離し、男性と年長の少年のほとんどは虐殺され、婦女たちは強姦(ごうかん)されたり、虐待されたりして性奴隷として売られた。また、若いヤジディ教徒の少年たちは洗脳され、聖戦士や自爆テロ犯に仕立てられた。
ハリール市長によると、シンジャルでこれまでに確認されている埋葬地は31カ所だけだが、調査は継続して行われており、市内に50カ所以上ある可能性もあると説明した。
昨年8月にAP通信が実施した調査(英語)によると、ISは処刑した人々をイラクとシリアの72カ所に葬ったとされている。AP通信は、72カ所に葬られた人は5200~1万5千人に上ると推定している。報告書には、シンジャル山は埋葬地で満ちていると書かれている。
ジョン・ケリー米国務長官(当時)は昨年3月、イラクとシリアにおけるヤジディ教徒やキリスト教徒、他の宗教的少数派に対するISの虐殺行為を「ジェノサイド(大量虐殺)」と断定。国連の独立調査委員会も昨年6月、ISがヤジディ教徒約40万人を組織的に拘束し、ジェノサイドを行っているとする報告書を発表している。
米ホロコースト記念館ジェノサイド防止センターのナオミ・キコラー副所長はAP通信に対し、「私たちはヤジディ教徒を滅ぼす明確な意図があることを見ています」とコメント。「実行された犯罪を組織的に文書化し、証拠を保存し、埋葬地を特定して保護することを確実にする努力がほとんどなされてきませんでした」と、必要な対応がこれまで取られてこなかったことを指摘した。
ニューヨークで今月初めに開催された世界女性サミットでは、ISから逃れたヤジディ教徒の女性、シャイアン・イブラヒムさんがスピーチをした。イブラヒムさんは、ISが彼女の町に侵攻し、家族を捕虜にしたこと、またその後、彼女が直面した恐ろしい体験を語った。
イブラヒムさんはISに連れ去られた後、わずか1ドルで5回も性奴隷として売られ、逃走を試みた際には感電死させられそうにもなった。現在、イブラヒムさんはISの支配から解放され、イラン北部の難民キャンプに住んでいるが、40人いた家族や親族のうち、行方を知っているのは20人だけだという。
同じくサミットでスピーチしたヤジディ教徒の活動家フェリャル・ピラリさんもまた、ISの残虐な行為について語った。ピラリさんの友人は、家族と共にISの占領時にイラク北部に住んでいた。友人は当時妊娠しており、ISが町を占領する前に逃れることができなかったという。
ピラリさんによると、ISの戦闘員は友人の腹を切り裂き、胎児を取り出した上で、友人らを強姦。戦闘員らは友人が死亡したと思いその場を去り、その後家族が発見したため、命は取り留めることができたが、胎児は亡くなったという。