十代の少女ヤスミンさんが、生きたまま自分に火を付けたいきさつを語った。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)によるレイプや拷問を逃れるためだったという。
現在ドイツに避難しているヤジディ教徒のヤスミンさんは、16歳の時にISに捕らえられ、7日間監禁された。何とか脱出できたヤスミンさんは、イラクの難民キャンプに行ったが、再び捕らえられる危険にさらされていた。身を守るため、自分の体を灯油に浸し、醜い姿になるためにわざと火を付けたという。
「あの人たちの声が耳に残っていました。(中略)あの人たちの声が聞こえて、とても怖かったんです」「もう耐えられませんでした。あの時はそういう状態でした」と、ヤスミンさんは米ニューヨーク・ポスト紙に語った。
ドイツにはISから逃れてきたヤジディ教徒の女性が約1100人いるが、トラウマ状態にあるため心理学者らによる治療を受けている。今は18歳になったヤスミンさんもその1人だ。彼女たちは全員、2年間ドイツに留まる許可を得ている。
ヤスミンさんと妹は、ISから逃れるために山間部に隠れていた。今は両親とも再会し、妹と2人の兄弟もドイツにいる。
「ISのイデオロギーでは、ヤジディ教徒たちは人間ではないのです」と、避難民の心理治療を指導するドイツ人医師、ジャン・イルハン・キジルハン氏は同紙に語った。「ナチス政権時代は、ドイツ人もユダヤ人に同じ扱いをしました」
ISが2014年8月にイラク北部のシンジャル地方に侵攻したときには、数千人の女性や少女らがISの兵士らに誘拐された。数百人の市民が殺害され、40万人余りが避難を余儀なくされた。約5千人が捕えられ、そのうち約3千人が今も捕虜になっていると考えられている。
逃亡してきた女性や少女らは、残虐な虐待の様子を伝えている。彼女たちはたった1箱のタバコと物々交換され、性奴隷として地下牢(ろう)に閉じ込められた。
ヤジディ教はゾロアスター教の分派で、古代宗教の伝承と、キリスト教やイスラム教の混合宗教である。ISはヤジディ教徒が「悪魔崇拝者」だと信じている。