英国ナショナルトラストが、毎年開催している恒例の行事「イースターエッグハント」の名称に、今年は「イースター」の語を使わない決定をしたことを受け、英国国教会が「信仰にエアブラシを吹きかけるような行為」だとして非難している。
ナショナルトラストと菓子メーカーのキャドバリー社は今年、聖金曜日の14日午前10時から午後4時まで、計300以上のイベントを開催する。毎年多くの子どもたちが、あちこちにあるナショナルトラストの敷地で、卵の形をしたチョコレートを探すこのイベントに参加しているが、今年はこの10年で初めて、イベント名から「イースター」の語を外すという。
ナショナルトラストによるイースターエッグハントは、2008年からスタート。当初は、イースター当日と休日となる翌日の月曜日に行われる、家族のための小さなイベントだった。しかし今では、100万組以上の家族が参加し、開催期間も聖金曜日から4日間の2倍に。今年は38万人の子どもたちが参加する見込みだ。
キャドバリー社は、キリスト教徒以外からの参加も呼び掛けたい意向だ。「どんな宗教の人や無宗教の人たちにも、私どもの季節限定のお菓子を楽しんでほしいのです」と述べている。
これに対して英国国教会側は、「こうした販売キャンペーンは、イースターから宗教色を消し去ろうとする愚行と言えます」と主張している。
同教会のナンバー2であるヨーク大主教ジョン・センタムは、今回の決定が結局は「クエーカー教徒だったキャドバリー社の創業者、ジョン・キャドバリーの墓前に唾を吐き掛ける」ことになってしまうと警告する。
英国のミーニングフル・チョコレート社のデイビッド・マーシャル社長は、「英国唯一の宗教的イースターエッグである『リアルイースターエッグ』を製造している者として、私たちは聖金曜日の意義に反するような行為にショックを受けています。これは、イエス・キリストとキャドバリー社のウサギを巧みに入れ替えて、聖金曜日の良き伝統から子どもたちや家族を遠ざけようとする生産工程と言っていいでしょう」と述べている。
マーシャル氏は英国クリスチャントゥデイに、「聖金曜日をないがしろにするような商業活動をすると、信仰などは大した問題ではないということを植え付けてしまうことになります」と語った。
ナショナルトラストのホームページには、かつては「キャドバリー社提供、ナショナルトラストのイースターエッグトレイル」と記載されていたが、今年は「ナショナルトラストでキャドバリー・エッグハントに参加しよう」と記載されている。
一方、ナショナルトラストは、イースターを軽視しているわけではなく、名称変更には責任を持って対処している、と述べている。
広報担当者は「ナショナルトラストは少しもイースターの重要性を軽視していません。毎年この時期に家族の絆を強めてもらおうと、たくさんのイベントやさまざまな活動、ウォーキングイベントを開催しています。エッグハントのネーミングや文言については、キャドバリー社と協議しながら、責任を持って行っています」と言う。
さらに、「ナショナルトラストが、イースターの意義を軽く見ているなどと言うのはナンセンスです。全くの見当違いです。まさにこの特別な季節を、家族が一緒になって祝うためにたくさんのプログラムを催しているのです。いろいろな場所に、イースター関連のものが用意されていることが、少し見ただけでも分かります。私たちは、キャドバリー社と10年にわたって、イースターエッグハントの催しを協力して行ってきました。私たちの間でも、お客様にとっても、相変わらずとても人気のイベントです。ネーミングや文言についても、イースターの時期の、より広範囲な商業活動の一端を担う者として、キャドバリー社は主導的な役割を果たしています」と語った。
ナショナルトラストはツイッターにも、「私たちは、いかなる意味においても、イースターの重要性を軽視してはいません。イースターについて、私たちのホームページ上だけでも、1万3千以上もの記載がありますから」と書いている。
キャドバリー社も「毎年、私たちのイースター・キャンペーンには異なった名前を付けており、今年はキャンペーンを『キャドバリー・グレートブリティッシュ・エッグハント』としただけです」と述べている。