世界の恵まれない子どもたちを支援しているキリスト教慈善団体「コンパッション」(本部:米コロラド州)が、15日でインドにおける全事業から撤退する。インド政府により海外からの資金調達を遮断されたためで、同団体が支援していた15万人余りの子どもたちの状況が一層悪化することになる。
インド政府の対応をめぐっては、ジョン・ケリー元米国務長官などの政治家らがロビー活動を行っていたが、結局失敗に終わってしまった。コンパッションの英国支部は9日、撤退するに当たり、「重い心境」にあることを支援者へ向けたメールで明かした。
「私たちはこうならないことを期待して祈っていましたが、これまで皆様がこの働きにご協力くださったことを感謝したいと思います」
このような結果となったのは、海外からの資金調達に「事前の許可」を必要とする団体のリストに、コンパッションが挙げられたことによる。同団体はこれまで、インド全土の地域教会を基盤とする500余りのプロジェクトを支援してきたが、リストに掲載されたことにより、昨年3月以降、海外から送られてくる毎月350万ドル(約4千万円)の支援金が遮断され、撤退を余儀なくされてしまったという。
コンパッションは50年近くインドで活動しており、今回の撤退は、ナレンドラ・モディ首相率いるヒンズー至上主義の与党「インド人民党」(BPJ)による広範なキリスト教取り締まりの一環と考えられている。英ガーディアン紙(英語)によると、インドでは過去2年間で外資系団体の数が半減したという。
コンパッションのサンティアゴ・ジミー・メラド会長兼最高責任者(CEO)は、インドで同団体が支援している14万7千人の乳児や児童、10代の若者たちのことを思うと、「心が痛む」とし、インド国内にいる127人のスタッフについても深く憂慮していると述べた。
「コンパッションがインドにおいて、いかなる法律も犯していないことを保証します」。サンティアゴ氏は同団体のブログ(英語)でこう述べ、「私たちは、奉仕する全ての国の法律を順守することに徹してきましたし、これからも徹し続けます」と続けた。
「インドのメディアが、コンパッションは支援プログラムの恩恵にあずからせる代償として、子どもたちをキリスト教に改宗させていると報じているのを、皆さんは目にしたことがあるかもしれません。もちろんそれは事実ではありません。私たちは現地のキリスト教会と協力し、目に見える形でイエスの愛を伝えているのです。プログラムの恩恵にあずからせる代償として、子どもたちに改宗するよう要求したことは一度もありません。そのようなことをするなら、イエス様の御心に反することになります。イエス様は私たち一人一人に、値なしに尊厳や自由、恵みを与えてくださるからです。コンパッションのパートナー教会は、人種や宗教、カーストや主義主張とは無関係に、恵まれない子どもたちに全人格的児童育成プログラムを提供しています」
昨年12月に支援者に送られたメールには、インド政府による資金調達の「遮断」は、「コンパッションがキリスト教主義を土台に設立されており、キリスト教の価値観を表明していることが唯一の理由です」と書かれていた。