過激派組織「イスラム国」(IS)は26日、誘拐したインド人カトリック司祭、トーマス・ウズナリル神父の動画を公開した。インド政府は動画公開を受け、ウズナリル神父の解放のために必要なあらゆることを行うと約束した。
インド・バンガロール出身のウズナリル神父は、ISが今年3月4日、中東イエメン南部の都市アデンにある「神の愛の宣教者会」が運営する老人ホームを襲撃した際、戦闘員たちによって誘拐された。この襲撃では、修道女4人を含む計16人が殺害された。その後、カトリック教会とインド政府は否定していたものの、今年の聖金曜日(3月25日)にウズナリル神父が磔(はりつけ)にされるといううわさが急速に広まるなどしていた。
ISが公開した動画では、すっかり衰弱したウズナリル神父が、インド政府とローマ教皇フランシスコに、自身の解放のために尽力してくれるように懇願している。ウズナリル神父は「非常に悲しみ、落ち込んでいます」と話し、自身が欧州人ではなく、インド人であるために、十分な対応が取られていないなどと語った。
「もし私が、欧州出身の司祭であったなら、私のことがもっと真剣に受け止められていたでしょう。私はインド出身です。おそらく私はあまり価値がないと見なされているのです」
ウズナリル神父はまた、「教皇フランシスコや(アラブ首長国連邦=UAEの)アブダビ司教は、私を捕らえている者たちが連絡を取っているにもかかわらず、私を解放するために何もしていません。親愛なる教皇フランシスコ、親愛なる聖なる父よ、父として、私の命を助けてください。私は非常に落ち込んでいます。私の健康は悪化しています」と語った。
動画が公開された後、インド外務省は、「皆さんは、イエメンの現在の状況をご存じだと思います。イエメンは、中央政権に力がなく、内戦状態にあり、数カ月前に誘拐されたトム(トーマスの愛称)神父が無事に解放されることに関しては、その地域の国々、特にサウジアラビアや、現地のイエメン当局とも定期的に連絡を取っています。この件については、引き続き尽力します」とするコメントを発表した。
スシュマ・スワラージ外相はまた自身のツイッターに、「私はトム神父からの動画を見ました。彼はインド国民であり、あらゆるインド人の命は私たちにとって最も貴重です。私たちは、トム神父がとらわれの身から無事に解放されるために、努力を惜しみませんでしたし、これからもそう致します」と書き込んだ。