過激派組織「イスラム国」(IS)に誘拐され、聖金曜日の3月25日に十字架につけられて殺害されたと見られているカトリックの司祭トーマス・ウズナリル神父の消息について、相互に対立するニュースが報じられている。そのことから、彼がまだ生存している希望がある。
オーストリアのニュースでは、ウィーン大司教のクリストフ・シェーンボルン枢機卿が復活の聖なる徹夜祭ミサの中で、56歳のウズナリル司祭が殺害されたと主張したと報じられているが、南アラビアのポール・ヒンダー司教は、「トム(トーマスの愛称)神父が誘拐者の手中でまだ生存しているという強い兆候があります」と発表した。
カトリックニュース通信の報道によると、ヒンダー氏はウズナリル氏の生命を保護するためにこれ以上の情報は出せないが、ウズナリル氏が殺害されていないという希望は強く持っていると述べた。ヒンダー氏はまた、シェーンボルン氏が誤った情報をつかんでいたため、声明を訂正したとも明かした。
「シェーンボルン枢機卿は、バンガロールのモラス大司教の誤った発言を元にした自身の発言をすでに訂正しています。インドのあるメディアは神経質で詮索好きが過ぎており、トム神父の生命をもてあそんでいることに気付いていません。私は初めに申し上げた理由(トム神父の生命を守るため)により、これ以上話すことはできません」とヒンダー氏。
インドのバンガロール出身のウズナリル司祭は3月4日、ISと関連のあるテロリストがイエメンのアデンにある「神の愛の宣教者会」経営の老人ホームを襲撃した際に誘拐された。この事件では、修道女4人を含む16人が殺害された。ウズナリル氏についての唯一の情報は、戦闘員が司祭を車に乗せて走り去ったという目撃者の証言だけだ。
ISの行いは、米国や他の主要な諸国から、イラクとシリアのキリスト教徒やヤジディ教徒を含む少数派の虐殺として認識されている。人々に対し、彼らの教えへの改宗、人頭税の支払い、あるいは死を強要している。
ウズナリル氏が聖金曜日に十字架につけられて殺害されたという噂がインターネットを独り歩きしているが、聖パトリックカトリック教会のC・P・ヴァルキース神父とネブラスカ州グーテンバーグにある、よきすすめの聖母教会のマイク・パンパラ神父は、その情報が誤っているという希望を述べた。
ヴァルキース神父は、「私が米国に来るまで、私たちは同じ州で働いていました」と語り、パンパラ神父は、「私たちは共に成長しました。私たちはそのニュースを報じるソーシャルメディアが間違っていることを心から希望します。私たちはそれが本当でないことを願います。まだ誰も犯行声明を出していないので、私たちには何が起きているか分かりません。本当に未確認なので、私たちは希望をもって祈ります」と語った。
カトリック系のUCAN通信は3月30日、インドの司教がインド政府に対し、ウズナリル氏に何が起きているかを特定するよう呼び掛けたことを報じた。インド司教会議では、ウズナリル氏の消息についての混乱が、自宅で待っている家族に多大な苦難となっていることにも言及した。インド司教会議の副事務総長ジョセフ・チンナヤン神父は、「私たちは政府に対し、(司祭の)生死を確認するために緊急に介入するよう求めます」と述べた。
司教会議は手紙の中で、「私たちはこのことを非常に心配しており、彼の親族はこのことで激しく苦しんでおり、私たち皆が強い懸念を抱いています」とつづった。