By Dr. K. Kinoshita(木下和好)
YouCanSpeak 開発者・同時通訳者
元NHK TV・ラジオ 英語教授
<文法用語を使わない英語学習法>
YouCanSpeak の学習には文法的説明が一切無い(Pop up ページに出てくる名詞化・副詞化の説明を除いては)。その理由の1つは、文法アレルギーの人にも安心して学んでいただくためだ。でも文法が不要という意味ではない。世界に何千もある言語の中で、文法が無い言語は1つも存在しない。文法を捨てることは、その言語全体を捨てることを意味する。
言葉を発したときに、聞いた人がその意味を理解することができるのは、互いに共有している言葉の約束事があるからだ。「この言い方をしたら、この意味になる」とか「この意味を伝えるためには、この言い方をする」という約束事だ。このように、どの言語であっても「意味が違えば言い方が違う」「言い方が違えば意味が違う」という原則があり、この原則に基づいた約束事が「本当の文法」あるいは「真の文法」ということになる。
YouCanSpeak は、英語を通じさせるための約束事を「この意味を伝えるためにはこの言い方をする」という学習4段階方式で学ぶシステムになっている。
<会話上達のためには文法は不要か?>
子どもが言葉を覚えるとき、文法とか文法用語など全く意識することなく習得するので、英会話を学ぶときも文法は不要だし、むしろ上達の妨げになると思っている人が実に多い。文法を意識せずに、とにかく話す練習をすれば、英語がペラペラになると考えるのだ。
かつてあるテレビ局で、ある著名人が英会話関連の番組の司会をし、しきりに文法不要論を唱えていた。そして文法をかなぐり捨てた自分が、いかに英語を上手に話せるかを番組の中で毎回披露していた。でも私が見る限り、彼は自ら否定していた文法を土台として英語を話していたので、そこには明らかな矛盾があった。
文法不要論に潜む危険性は、「意味を通じさせるために互いに共有している言葉の約束事」までをも軽視したり無視したりすることだ。言葉の約束事まで放棄したら、その言葉を学ぶ意味は全くなくなり、習得することも不可能になる。英会話習得に関して文法不要論を唱える人たちは、「真の文法」と「文法用語」の区別がついていない。
<英語を知らない米国人講師>
私が英会話学校を経営していたとき、米国人講師の個人レッスンを受けていた高校生が、ある日私のところにやって来て、講師を変えてほしいと言った。担当講師が英語を十分理解していないというのがその理由だった。
現在完了形の使い方がよく分からなかったので、米国人講師に ”present perfect tense(現在完了形)”について詳しく教えてほしいと言ったところ、その講師は ”I don’t know what you are talking about.(言っている意味が分からない)” と答えたという。いくら米国人とはいえ、現在完了形すら知らない人に英語を教える資格は無いと思ったらしい。
それで私は彼に言った。「あの先生は present perfect tense という文法用語は知らないかもしれないが、実際に話す時は present perfect tense をいとも簡単にしかも正確に使うことができるのだよ。君の場合、文法用語は知っていても、とっさに口から出ないよね。それでもあの先生は英語を知らないと言えますか?」と。私の説明に彼は納得し、そのまま個人レッスンを続けた。
<真の文法と文法用語の違い>
「文法」と「文法用語」の違いは、建物に例えると分かりやすい。人が家を建てるとき、「図面」に従って建てる。また、すでに立っている建物は「図面」に落とすことができる。でも「建物」と「図面」は同じではない。立派な図面を描いても、それだけで建物が建ったことにはならない。逆に図面がなくても、立派な建物を建てることもできる。
あの有名なスペインの建築家ガウディがサクラダファミリアを建てたとき(今でも建築中)、図面は無かった。ひもと重りを使って建物の重力バランスを確認し、その上下を逆転してあの不規則な形の建物を建て始めた。でもサクラダファミリアが完成した暁には、誰かがそれを「図面」にすることはできる。
図面
↓↑
建物
これを言葉に置き換えると、言葉(=真の文法)が建物、そして文法用語が図面となる。言葉を深く理解するには、図面が有効であるが、図面を100パーセント把握しても、使える言葉を習得したことにはならない。学校の英語教育の弱点がここにある。
真の文法は「意味を通じさせるための約束事」なので、英語を話したければ、文法用語の領域にとどまるのではなく、全ての英語表現を「意味」として捉える必要がある。ある特定な英語表現に明確な意味が付加されれば、その積み重ねの結果として英語が話せるようになる。たとえ文法用語を知らなくても。
真の文法を把握していると言葉が通じる
真の文法を把握していないと言葉が通じない
「文法用語」に翻弄(ほんろう)されることなく「真の文法」を身に付ければ、必ず話せるようになる。その実現のために YouCanSpeak が開発された。YouCanSpeak は「設計図技師」を育てるのではなく、素晴らしい家を建てる(きっちりした英語を話す)ことのできる「大工」を育成するところにその使命がある。
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