ドナルド・トランプ米大統領は27日、「イスラム過激派のテロリストを米国から締め出す」ための新たな大統領令に署名し、迫害下にあるキリスト教徒を難民として優遇すると約束した。
トランプ氏はこの日、米国における難民政策と査証(ビザ)政策を厳格化する新たな大統領令への署名に先立ち、キリスト教系の米CBNニュースのインタビューに応じ、「私たちは、彼ら(迫害下にあるキリスト教徒)を助けます。彼らはとんでもない扱いを受けているからです」と語った。
「シリア人でしかもキリスト教徒である場合、米国への入国は不可能であるか、少なくとも非常に困難であったことをご存じでしょうか。イスラム教徒であれば入国できました。しかしキリスト教徒の場合は、ほとんど不可能でした。その理由はとても不公平です。誰もが同じように迫害されました。あらゆる人が斬首されましたが、特にキリスト教徒が斬首されました。私はそういった状況はあまりにも不公平だと思うのです」
米キリスト教団体「国際クリスチャン・フリーダム」のジム・ジェイコブソン会長は、この大統領令を称賛した。
ジェイコブソン氏は声明で、「これにより、迫害下にあるキリスト教徒の(米国)移住が、ようやく検討されるようになります。オバマ政権下では、シリアやイラクなどの迫害下にあるキリスト教徒は、実質的に無視されるか米国への移住をきっぱり拒否されるかのどちらかでした」とコメント。「トランプ政権は、迫害下のキリスト教徒に希望をもたらしました。彼らの移住がようやく検討されることになるのです」と語った。
AP通信によると、トランプ氏が署名した大統領令は、あらゆる国からの難民の受け入れを120日間一時的に停止。その期間に、政府が迫害下にあるキリスト教徒を優遇して難民として受け入れる計画を立案するとみられている。
米シンクタンク「ピュー研究所」によると、2016年度に米国が認可した難民の数は8万4995人で、うち1万2587人がシリア出身だった。バラク・オバマ前大統領は17年に11万人の難民を入国させる計画を立てていたが、米ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプ氏はこの数字を5万人に引き下げる可能性が高い。
米国務省難民手続センター(RPC)のデータによると、16年に米国に入国したシリア難民の約98パーセントがスンニ派のイスラム教徒で、キリスト教徒は0・5パーセントしかいなかった。
また、報道によると、この大統領令では、イスラム教徒が多い中東とアフリカの7カ国(イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン)に対しては、一般市民に対するビザ発給も90日間停止する。
米フォックス・ニュースによると、新たな大統領令は、米国へ来る全ての移民と訪問者に対して、「極めて厳格な審査」を命じている。またトランプ氏は、90日以内にシリア周辺に安全地帯を創設する計画を立てるよう、国防総省と国務省に指示しているという。
しかし、一部のキリスト教団体は、難民の再定住を抑制するトランプ氏の計画に失望を表明している。
福音派の米国福音同盟(NAE)が設立した慈善団体「ワールドリリーフ」のスコット・アーベイター会長は声明を発表。「この禁令によって生じる(難民受け入れの)長期的な遅れは、大部分が女性と子どもで構成される難民をさらに傷つけ、家族を引き離すことになります。私たち米国民はテロを終わらせようとして戦っているにもかかわらず、そのテロから逃れようとしている人々を罰することになるのです」と述べ、トランプ氏の政策を非難した。