東方正教会では、グレゴリオ暦によりクリスマス(降誕祭)は1月7日に祝われる。コプト正教会でもコプト暦(古代エジプト暦に起源を持ち、アレクサンドリア暦とも呼ばれる)により、同じく1月7日にクリスマスが祝われた。昨年7月に日本で初めての正式なコプト正教会として開堂式を行った、京都府木津川市の聖マルコ・聖母マリア・コプト正教会でも7日、オーストラリアから訪日したジョシュア・タドロス神父を迎えてミサ(聖体礼儀)が行われた。
8日午後5時から、同教会では初めてとなる成人洗礼式が、来日したジョシュア・タドロス神父によって行われ、大阪府に住む日本人の女性が洗礼を受けた。洗礼に当たって、旧約聖書サムエル記に登場するサムエルの母「ハンナ」という名が洗礼名として選ばれ、信仰を受け入れる証しとして初めに「信仰の油」が頭に塗られた。
そして、イエス・キリストとの関係を分かち合い、ますます成長し続けられるようにと、同教会の信徒の女性と男性の2人が信仰の支え役として任命された。(通常コプト正教会では「代母」「代父」は未成人の洗礼の場合のみ任命されるが、この日の洗礼式では特別に2人が任命された)
西に向いて左手を上げ、悪魔との関係を棄て去る宣言をする
続いて、信徒一同とジョシュア神父全員が西側を向いて左手を上げ、サタン(悪魔)とその力による邪悪・暗闇などの全てを退けることを英語で宣言する。
(以下和訳は記者が独自に翻訳した)
I renounce you Satan, and all your unclean works,
私はサタンとその全ての汚れた働きを棄(す)て去ります。
And all your wicked angels and all your evil demons,
全ての邪悪な天使と、全ての邪悪な悪魔を
And all your power, and all your abominable service
全ての悪魔の力と、全ての忌まわしい働きを
And all your evil cunning and error, and all your army
全ての邪悪な狡猾(こうかつ)さと過ちと全ての悪魔の軍勢を
And all your authority and all the result of your impieties.
全ての悪魔の権威と不信心からくる全ての結果を
I renounce you I renounce you I renounce you
私は棄て去ります。私は棄て去ります。私は棄て去ります。
そして、ジョシュア神父が受洗者に向かって3度宣言した。
「Come out unclean spirit(汚れた霊よ、出て行きなさい)」
東に向いて右手を上げ、イエス・キリストの信仰を受け入れる宣言
続いて信徒一同とジョシュア神父が東に向き直り、右手を上げてイエス・キリストの信仰を受け入れる宣言をした。
I confess you, O Christ my God,
私は神であるイエス・キリストに告白します
And all your saving laws,
またあなたの全ての守られている法
And all your living service
全てのあなたの生ける働き
And all your life giving works
働きを与える全ての生に
I believe in one God, God the Father the Pantocrator
私は信じます。唯一の神、神であり父である全能の神
And His only-begotten Son,
神の独り子
Jesus Christ our Lord,
イエス・キリスト、私たちの主
And The Holy Spirit, the Giver of Life
聖霊、命の与え主
And the resurrection of the flesh
肉体のよみがえり
And the one ,only holy catholic and apostolic church.
ただ1つの、神聖にして普遍の使徒たちの教会を
Amen
アーメン。
信仰の告白と「喜びの油の注ぎ」
そして、ジョシュア神父から3度「Do you believe?(信じますか?)」と問い掛けがなされ、受洗者は3度「I believe.(信じます)」と答えた。
さらに、洗礼によって生まれ変わり、神からの喜びが与えられることを象徴する「喜びの油の注ぎ」が塗られた。まず「心に喜びを受け入れることができる」ようにと、胸(心臓)に油が注がれる。次に、背中に油が注がれる。これは神への「意志」を象徴する。さらに両腕に油が注がれる。これは、これから喜びによってなされる「良い行為」を両腕でなすことができるように、という意味が込められている。
洗礼
続いて洗礼がなされる。洗礼槽の中で全身を3度水につける。これは、イエス・キリストの遺体が墓の中に3日間置かれ、復活したことにちなんでいる。3度目に水につけたとき、受洗者はイエス・キリストと共に復活し、新しい命が与えられる。
洗礼槽から身を上げると、教会の信徒一同から拍手が沸き起こった。
36カ所の油の注ぎ
その後、体の36カ所に油が注がれる。
まず頭部の頭頂、両目の上、両鼻、口元、両耳の8カ所に油が塗られる。これは人間の「感覚」を意味する場所である。続いて、胸(心臓)、みぞおち、腹、背中、関節(両肩・両肘・両手首のそれぞれ内側と外側)の16カ所に油が塗られる。これらは「命」と「出産」を意味している。そして、足の関節(腰の左右・ひざ・両足首)の表と裏の12カ所に油が注がれる。頭部の8カ所、胴体の16カ所、下半身の12カ所の計36カ所に油が注がれる。
教会の一同から「congratulation」という声と拍手が上がった。
赤いリボンを巻く
最後に、ジョシュア神父から赤いひもが渡され、体に巻かれた。旧約聖書ヨシュア記にも、エリコの町でラハブが真っ赤なひもを部屋の窓に結び付けて災いを避けたという物語がある。司祭によって巻かれる赤いひもは「イエスの血」を象徴し、「イエスの血によって私たちは救われる」ということを意味している。
「二人は彼女に言った。『あなたが我々に誓わせた誓いから、我々が解かれることもある。 我々がここに攻め込むとき、我々をつり降ろした窓にこの真っ赤なひもを結び付けておきなさい。またあなたの父母、兄弟、一族を一人残らず家に集めておきなさい。もし、だれかが戸口から外へ出たなら、血を流すことになっても、その責任はその人にある。我々には責任がない。だが、あなたと一緒に家の中にいる者に手をかけるなら、その血の責任は我々にある。もし、あなたが我々のことをだれかに知らせるなら、我々は、あなたの誓わせた誓いから解かれる。』ラハブは、『お言葉どおりにいたしましょう』と答えて、二人を送り出し、彼らが立ち去ると、真っ赤なひもを窓に結び付けた」(ヨシュア記2:17~21)
最後に、信徒、神父一同によって「主の祈り」が唱えられた。
洗礼式に続いてミサ(聖体礼儀)が行われ、コプト正教会の第118代教皇(アレクサンドリア教皇ならびに聖マルコ大主教管区総主教)タワドロス2世によるメッセージも朗読された。受洗した女性はこの日、初めての聖体拝領を受けた。