気候変動は「でっちあげだ」と否定的なドナルド・トランプ氏が世界第2の温室効果ガス排出国である米国の次期大統領に選ばれ、同氏は気候変動の否定論者を米環境保護庁(EPA)長官に選んだと、同国の主要なメディアが報じている。
その一方で、世界教会協議会(WCC)とルーテル世界連盟(LWF)、および両組織の加盟教会などがつくる国際緊急支援・政策提言組織「ACTアライアンス」の代表団は、モロッコのマラケシュで7日から18日まで開かれている国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第22回締約国会議(COP22)で、地球の気温上昇を食い止めるために、クリーンなエネルギーに基づく低炭素経済へのより急速な移行を合同で要求している。ACTアライアンスが9日、公式サイトでWCCやLWFとの共同記者発表として明らかにした。
一方、カトリックの援助・福祉活動組織である国際カリタスは、「マラケシュでの気候会議では最も脆弱(ぜいじゃく)な人々に焦点を当てるよう」求めているとするブログの記事と「国連の気候協定の迅速な実施を あらためて最も脆弱な人たちへの焦点を」と題する公式見解を7日、公式サイトに掲載した。
信仰に基づく組織は、気候変動に関する提言活動や行動を続ける一環として、COP22に代表を送っている。
この会議の開会日に、ACTアライアンスは2016年のこの会議が「行動のCOP」になるに違いないという希望を表明し、そこで「パリ協定で示された目標に今こそ肉付けをし、野心的な規則が見出しに確実に続くようにしなければならない」と述べた。
「政府は気候変動に取り組むための自らの約束を示したので、パリでのサミット(COP21)でなされた協定は今こそ実施できるのです。ところが、見出しだけの協定では何も変わらないのですから、COP22の議題は、実施を今こそ確実に始めるために非常に重要なのです」と、ACTアライアンス気候変動作業部会のリーダーであるディネッシュ・ヴィヤス氏は語った。
2015年に化石燃料への投資をしないという方針を決定したLWFからは、全て青年たちからなる代表団がCOP21に参加しており、アフリカからマラケシュに参加しているメンバーもいる。気候変動をめぐる交渉で、LWFは世代間の正義や、異常気象の影響に対して最も脆弱な人たちとの連帯を提唱している。
LWF総幹事のマルティン・ユンゲ牧師は、「宗教改革のカトリックとルーテルによる共同記念行事で私たちは、この世界における私たちの奉仕は、搾取や飽くなき貪欲の具体的な影響に苦しんでいる、神の創られた世界にまで広げなければならないと述べました。私たちは、神の創られた世界を責任を持って大切にすることへとつながるような心と頭の変革に向けて働かなければなりません」と語った。
近年において、エキュメニカルなグループは気候変動に関する提言や行動に深く関わってきており、どの締約国会議にも参加してきている。WCCと関連団体は、気候変動を引き起こす排出を生み出す化石燃料産業に関して力強い道義的な立場をとってきている。彼らは化石燃料への投資を大幅に引き揚げた。
宗教者は気候に関する正義について集まって共に働くべきであり、それは今やこれまでになく必要だと、WCC総幹事のオラフ・フィクセ・トヴェイト牧師は述べた。「私は最近ニュージーランドとオーストラリアを訪問して、気候難民に会いました。私たちは未来の話をしているのではありません。これは現在の状況であり、今こそ行動を起こす時なのです。気候変動と被造世界全体に対するその悪影響、とりわけ脆弱で貧しい社会や先住民族の社会に対する悪影響は、世界中の宗教者たちにとって緊急の問題です。不自然な気候の世界の中で社会的・政治的な緊張や恐怖、対立、立ち退きの危険性が増大している現在において、私たちの務めは社会的、生態学的な福祉と全ての人々のための持続可能な発展のために、正義と平和をもたらすことです」と、トヴェイト総幹事は語った。
マラケシュでCOP22が準備されているときに、これら3つの組織の総幹事は220人の他の宗教指導者たちと共に、宗教者の団体による気候声明に署名した。COP22の議長であるモロッコのサラへディン・メズーア外務大臣が、この声明文を受け取るために、ACTとLWF、WCCが10日に開催したサイドイベントに招かれた。
一方、COP22に参加している国際カリタスの食糧安全提言担当者であるアドリアナ・オプロモラ氏は、「パリ気候協定が2015年11月に署名されて以来、飢餓や渇きがオセアニア地域全体にわたって広がっている」と、国際カリタスの公式サイトに掲載されたブログの記事に記した。
「COP22で、カリタスはとりわけアフリカの国々や共同体の立場を守りたいのです。アフリカは気候変動の影響を最も助長していないにもかかわらず、それに対して依然として脆弱なままです。アフリカにおける気候変動への適応策は、予測可能な資源の不足や、制度的な能力の弱さ、既存の環境法制の実施の乏しさのために、気候変動の悪影響に取り組むには不十分なのです」と、オブロモラ氏は言う。
国際カリタスは公式見解の中で、COP22の交渉者たちに対し、貧困や疎外・脆弱性という状況の中で生きている人たちの人権の尊重と擁護、小規模農家や市民社会・科学者・政府の包括的な討論の場を提供する農業ワークプログラム(AWP)の採用、気候に関する資金の明確化と、先進国による適応資金の大幅な増額、気候変動の影響が男女間や先住民族によって差があること、気候変動による損失と被害を適応から切り離して扱うことなどを勧告している。
「カリタスとして、私たちは回勅『ラウダート・シ』にある教皇フランシスコのメッセージを繰り返し、それによって人類が環境との関係を再定義しなければなりません。私たちは環境の一部なのであり、その主人ではないのですから」