教皇世界祈祷ネットワーク(Pope’s Worldwide Prayer Network)や「祈祷の使徒」運動、世界教会協議会(WCC)、アングリカン・コミュニオン環境ネットワーク(Anglican Communion Environmental Network)、グローバル・カトリック気候運動(Global Catholic Climate Movement)、ACTアライアンス、環境問題に関する宗教間協力運動「グリーンフェイス(GreenFaith)」(米ニュージャージー州)、ローザンヌ・世界福音同盟(WEA)クリエーションケア(被造物保護)・ネットワークは、9月1日を「被造物を大切にする世界祈願日」とするのを皮切りに、被造物のための祈りや行動をする「被造物の季節(Season of Creation)」運動を、アッシジの聖フランシスコの祭日である10月4日まで世界規模で呼び掛けている。
バチカン放送局英語版が8月28日に報じたところによると、教皇フランシスコは同日、9月1日に祝われる「被造物を大切にする世界祈願日」への注意を呼び掛けた。地球規模のエキュメニカルな被造物管理の大きな取り組みである「被造物を大切にする世界祈願日」は、正教会のリーダーシップの下で1989年に始まった。
教皇フランシスコは2015年8月6日付の書簡で、カトリック教会向けにこの日を定め、教皇庁正義と平和評議会の議長であるピーター・タークソン枢機卿と、教皇庁キリスト教一致推進評議会の議長であるクルト・コッホ枢機卿にそれぞれ宛てた。
この書簡の中で、教皇フランシスコは、「『被造物を大切にする世界祈願日』は個々の信者や共同体に対し、被造物の管理者となり、神が大切にするようにと私たちに信託された素晴らしい作品について神に感謝し、そして被造物の保護と私たちが住んでいるこの世界に対して犯した罪についての神の赦(ゆる)しのために神の助けを懇願する、自らの個人的な召命を再確認するのに適した機会を提供することでしょう」と述べている。
8月最後の日曜日に伝統的なアンジェラスの祈りの後で信者に向けて語った教皇フランシスコは、この行事を楽しみにして「今週の来る木曜日である9月1日、私たちは『被造物を大切にする世界祈願日』を、正教徒の兄弟たちや他の教会と共に記念します」と語り、この行事は「命を守り、環境と自然を大事にするという共通の責任を強めるための機会」だと述べた。
一方、カトリック中央協議会が8月25日に公式サイトで伝えたところによると、日本のカトリック教会では、主日に全教会で祈ることがふさわしいとの理由から、9月の第1日曜日にこの「被造物を大切にする世界祈願日」を設けることとなったという。
また、WCCは29日、公式サイトで「世界的な“被造物を大切にする祈願”—そして行動—の日が、キリスト教徒を団結させる」という見出しの記事を掲載。その中で、「キリスト教徒として、私たちには希望がある。私たちは神が被造物をお見捨てになることはなく、私たち自身も異なる未来の種をまくことによって、その希望の光明になれると信じる」とWCCのトヴェイト総幹事は、「神の美しい作品」のために共に祈るよう世界中のキリスト教徒に呼び掛けるビデオメッセージの中で述べた。
「被造物を大切にする世界祈願日」や「被造物の季節」には、多くの正教やカトリック、プロテスタント、そして聖公会の団体が参加し、世界中の22億人のキリスト教徒に対し、環境問題について祈り行動するよう促す。
トヴェイト総幹事は、自らのメッセージの中で、この祈りに加わる人たちが取ることができる他の行動についても触れた。「(2015年12月に国連の気候変動枠組み条約第21回締約国会議[COP21]で採択された)パリ協定を批准するよう、自国の政府に呼び掛けましょう。社会や生態系の健全さをより良く測る代替的な成長の指標を要求しましょう。私たちは化石燃料から投資を引き上げて、持続可能な代替策に再投資することができます」と同総幹事は述べた。
1989年、東方正教会の全地総主教であった故ディミトリオス1世が、9月1日を環境のための祈願の日として宣言した。正教会の暦における年では、神がどのようにしてこの世界をお創りになったのかを記念してその日が始まる。10月4日には、西方教会の諸伝統を持つローマ・カトリックや他の諸教会が、「太陽の賛歌」の著者であるアッシジの聖フランシスコを記念する。
この5週間に被造物のための時を祝うという提案は、2007年にルーマニアの都市シビウで行われた第3回ヨーロッパ・エキュメニカル大会でなされたもの。翌年、WCC中央委員会は、祈りと行動を通じて被造物のための時を守るよう諸教会を招いた。2015年、教皇フランシスコは9月1日を世界中のローマ・カトリック教会のための「被造物を大切にする世界祈願日」として定めた。
2016年、さまざまな伝統の間における協力的な取り組みは、被造物のための祈りと行動の両方を促すものとなっている。この目的のために、この運動に関する資料や情報をまとめるための1つの中心として、「SeasonofCreation.org」というアドレスの下に、エキュメニカルなウェブサイトが開設された。
参加者たちは、自らの祈りを行動へと移すための方法として、何らかの提言活動に取り組むよう促されている。加えて、国連総会と時を同じくして、パリ協定の緊急署名と批准を求める、共同の提言活動への取り組みが奨励されている。
「世界が記録破りの熱波に見舞われ続ける一方で、私たちカトリックは『ラウダート・シ』における教皇様の劇的な行動の呼び掛けに応える必要があります」と、「グローバル・カトリック気候運動」のグローバル・コーディネーターであるトマス・インスア氏は語った。「そして『被造物を大切にする世界祈願日』は、カトリックの各教区や地域社会が環境にやさしい取り組みを深め、『被造物の季節』の間に行動を起こそうと、他のキリスト教徒に加わるのには理想的な機会です」
個人や地域社会は地域レベルで行われる祈りの礼拝を企画するよう招かれており、協働の規模を示すため、それは地球の地図に示される。個人はまた、「被造物の季節」のハッシュタグ(#SeasonOfCreation)を促進するために、フェイスブックの行事やサンダークラップでの運動を通じてオンラインで参加するよう招かれてもいる。
一方、アングリカン・コミュニオン・ニュース・サービスも8月17日付の「被造物のための祈りに関するエキュメニカルな焦点」と題する記事で、「聖公会、ローマ・カトリック、正教のキリスト教徒は、9月1日に『被造物を大切にする世界祈願日』に参加し、10月4日のアッシジの聖フランシスコの祝祭に至るその後の1カ月を『被造物の季節』として用いるよう求められている」と報じた。
今年になって教皇フランシスコは「全てのキリスト教徒と共に」「被造物の季節」に参加するよう呼び掛けた。教皇のこの要請は、聖公会の各管区が「教会の礼拝と教えの毎年のパターンに不可欠な部分として、礼拝式文によって『被造物の季節』を祝うように」という、2009年の聖公会諮問評議会(ACC)からの呼び掛けと、2012年に再びACCが各管区に対し「教会暦に被造物の季節を含めることを検討する」よう求めたのに呼応するもの。
今、アングリカン・コミュニオン環境ネットワークが、グローバル・カトリック気候運動や他の組織と提携してこの祈りの日を推進し、「全ての信者たちがこの『季節』に参加するのを助ける」資料を集めている。南部アフリカ聖公会の環境コーディネーター、レイチェル・マッシュ博士は、ACEN運営委員会のメンバーだ。
マッシュ博士は、「神の園である地球は破られ、荒廃させられている。炭素の汚染を大気中に何十年間も流した結果、私たちはしっぺ返しを食らっている」と述べ、ホセア書8章7節「彼らは風の中で蒔き 嵐の中で刈り取る。芽が伸びても、穂が出ず 麦粉を作ることができない。作ったとしても、他国の人々が食い尽くす」に言及しながら「私たちが神の素晴らしい世界を悪用した結果、最も脆弱(ぜいじゃく)な社会が破壊的な嵐や干ばつ、そして洪水に直面している」と語った。
気候変動に関する米国の顧問であるグス・スペス氏は、最も重要な環境問題は生物多様性の喪失や生態系の崩壊、気候変動ではなく、「利己主義、貪欲、そして無関心」だと述べた。スペス氏は「これらに対処するために、私たちは文化的および霊的な変容が必要だ。そしてわれわれ科学者たちには、それをどうするのかは分からない」と語った。
マッシュ博士は、「神は私たちに何をするよう求めておられるのだろうか? 神は私たちに霊的な変容を導くよう求めておられるのであり、これには神の家族における兄弟姉妹としての私たちを分断している障壁を取り壊すことが含まれる」と付け加えた。
「被造物の季節」のタイミングが意味しているのは、それが北半球における収穫の最盛期に、そして南半球における春の再生の季節に当たるということだ。
さらに、ローザンヌ・WEAクリエーションケア(被造物保護)・ネットワークも、英文公式サイトやフェイスブックでこの祈りや行動に参加するよう呼び掛けている。