世界福音同盟(WEA)「被造物保護特別委員会」は、ローザンヌ被造物保護・ネットワーク、ティアファンド、ア・ロシャ・インターナショナルほか、多くの福音派団体と共に、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に出席し、被造物の保護の問題について福音派の声を上げていた。WEAは18日、パリで世界の指導者たちが達した最終的な協定に関する共同声明を公式サイトに掲載した。その全文(本紙による日本語訳)は次の通り。
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貧困や被造物保護、そして気候変動の問題への取り組みに携わっている福音派指導者として私たちは、2015年12月12日(土)に署名されたパリ協定を歓迎する。世界は史上初めて、地上にあるほぼ全ての国々が温室効果ガスの排出量を削減する責務を負った、地球規模の気候変動に関する取り決めを行い、地球の平均気温の上昇を1・5度未満に保つ努力を追求することで合意した。
キリスト教徒をはじめ宗教者たちは、力強い協定となるために圧力をかける運動において、中心的な役割を担ってきた。米国務省のある上級官吏は、「気候変動と闘うことは私たちの道義的な責任だということを主張する上で、宗教の共同体は不可欠な存在だ。キリスト教の共同体は、その取り組みを主導し、脆弱で脅威にさらされている社会を守る、力強い協定となるために圧力をかけるのを助けた」と述べている。パリでのこの会議で、世界各地の、しかも伝統の違いを超えて教会の主立った指導者たちが一致して他の宗教指導者たちに加わり、行動と、気候変動が持つ道義的な次元の認識を呼び掛けた。
世界の福音派共同体は、129カ国の6億人を超える福音派キリスト教徒に仕える世界福音同盟の総主事、エフライム・テンデロ監督によって代表されていた。気候変動の影響に対して最も脆弱な国々の一つ、フィリピン出身のテンデロ監督は、パリから発言し、「気候変動の議論全体には道義的な要素がある。二酸化炭素の排出量を減らすための決定は、人間の命は守られ、養われる必要があるという、倫理的な基盤に根ざしている。危険な化石燃料に基づくエネルギーに対して再生可能なエネルギー源へと移行していくことは、単に科学的な努力であるだけでなく、長期的な生き残りと人類の幸福を求める倫理的な行動でもある」と語った。
代表を務めた福音派の組織や団体には、ローザンヌ被造物保護・ネットワーク、キリスト教開発・環境団体のティアファンドやア・ロシャ・インターナショナル、そのほか多くのものが含まれていた。
ローザンヌ被造物保護担当上級補佐のエド・ブラウン牧師は、「私にとってとても驚くべきことは、世界的な福音派の共同体が、COPの会合で初めて力強く声を上げたこと、そして政府代表たちが私たちや他の宗教共同体の声に耳を傾けてくれたことだ。このために、気候をめぐる話し合いは、単に経済と政治だけのものから道義性を含むものへと永久に移り変わった。これは、起こるべくして起こったことだ」とコメントした。
「COP21開催中、パリにいて感激した」と、ア・ロシャ・インターナショナルの神学ディレクター、デイブ・ブックレス牧師は話した。「私たちはそれぞれの国や組織に戻るとき、神の民全てのための正義と、被造物全てのための福音を目の当たりにするため、この約束において一致団結するのだ」
パリ協定は完全ではない。各国政府は、地球の平均気温の上昇を「2度よりはるかに下回る」よう保ち、それを1・5度に制限するための「努力を追求する」責務を負うことで、1・5度を新しい目標として確立した。しかしながら、各国がパリで約束した排出削減は、「いつもの通り」の4度の予想から2・7度へと温暖化を減らすだけであって、地球規模の破局を防ぐにはまだあまりにも高すぎる。従って私たちは、この目標が真に達成されるまで、世界中のキリスト教徒を動員して祈り、行動し、圧力をかけ続けることによって、この過程に関与する責務を負う。
パリ協定は、地球規模の気候変動と効果的に闘っていく過程の単なる始まりに過ぎず、終わりではないと認識する。「私たちは、この極めて重要な気候に関する会議でまとめられた協定を歓迎する」と、ティアファンドの政策提言ディレクター、ポール・クック氏は話した。「これは前向きなよい一歩だが、それで満足しないようにしよう。これによって必要な全てのものが与えられるわけではない・・・世界中のキリスト教徒は、各国政府が自らの責任を受け入れるよう祈り、継続して働き掛け、必要とされる行動を政府が大胆に実行するときには、共に祝うだろう」
温室効果ガスを減らすためのこれらの行動とともに、(私たちが特別な関心を持っている)世界で最も貧しい社会を助けるために、世界の最も富裕な国々が、気候に関する資金に年1000億米ドルを2020年から提供することを再確認したことを、私たちは歓迎する。これらの資金は、発展途上国が気候変動の影響に適応し、クリーンなエネルギーへと自ら移行する助けとなるだろう。しかしながら私たちは、世界で最も富裕な国々がこの約束を実際に果たすには、今はまだほど遠い地点にいることに留意する。従って私たちは、これらの資金が真に流れ始めることを確かめるために、継続して働き掛け、彼らと共に活動する責務を負い、2025年より後も彼らに対し、自らの能力にふさわしい負担金を提供し続ける責任を負わせるだろう。
福音派指導者として、世界中で私たちを代表として遣わしてくれた国々へと、このパリ協定を持ち帰ることを約束し、その成果を祝い推進し、その実施と達成を先導し、向こう何年何カ月における達成目標を満たすようにと、各国政府や世界の指導者たちに対して働き掛けを続け、自らの役割を果たす。私たちはまた、2016年10月のハビタットIII(第3回国連人間居住会議)など、環境の悪化による影響の被害を受けている神の被造物への保護と隣人への愛を促進する、各国ごとや地球規模の運動を支援し、それに関与する責務を負う。
私たちは、人類と神の被造物との関係が真に釣り合ったものへと回復し、神が御旨とし、聖書が定めている関係を取り戻すまで、声を大にして福音派の構成員をこれらの極めて重要な問題群に関与させることを、決してやめはしないだろう。
■ WEA公式動画「COP21におけるキリスト教徒の声」(英語)