聖路加国際病院(東京都中央区)名誉院長・聖路加国際大学(同区)名誉理事長で、文化功労者・文化勲章受章者でもあり、クリスチャンとしても知られる著者の自叙伝。版元のハルメク(旧いきいき)は本書の帯に「日本一タフな105歳 初めての自叙伝」と記している。
もっとも、これまでにも、著者は94歳の時、『人生、これからが本番―私の履歴書』(日本経済新聞社、2006年)という本を著してはいる。しかし、ハルメクは10月のニュースリリースの中で、『僕は頑固な子どもだった』の特徴について、「日野原氏の唯一の自伝。105年を総括したのはこの一冊だけです」としている。
同社の担当者は11日、両書の違いに関する本紙からの問い合わせに対し、「『人生、これからが本番 私の履歴書』は、日経新聞の連載『私の履歴書』(依頼原稿)をまとめたもので、日経新聞という性質から、仕事面から見た使命、信念、生き様を書いた『半生』です。こちらも自叙伝なのでは?というお問いかけですと、ビジネスマンとしての自叙伝、といえるでしょう」とメールで回答した。
「ですが、弊社の『僕は頑固な子どもだった』は、日野原先生が自らの105年のいのち(時間)を、どう使って生きてきたのか、どう使うことが使命だったのかという、もっと幅広い視野で語られた人間史です」と担当者は続けて述べ、「そうした意味で、真の自叙伝、初めての自叙伝と考えております」と付け加えた。
著者自身も本書の中で、「今あえて自叙伝をまとめてみようと思い立ったのはなぜだろう」と自ら問い、これまで自身がたくさんの書物を著し、自らの経験についても触れてきたと述べつつ、「しかし、『日野原重明』という一人の人間を深く顧みたことはなかった」と記している。
ハルメクはまた、本書について、「最後の7章では、あまり語ろうとしなかった亡き妻への愛と別れについて触れています」「誕生から105歳までの日野原氏の年譜と、同じ時代の流行や出来事、事件も収録」と説明している。
「『生活習慣病』の生みの親、『人間ドック』の先駆者、日本国民の健康意識の変革、そして医師・看護師の育成と、長年医療界に貢献してきた日野原重明氏。2001年には『生きかた上手』(ハルメク(旧いきいき)刊)がベストセラーになり、高齢者のアイドル的存在にもなりました」と同社は著者について述べ、本書は「その氏が『どうしても、今書いておきたかった』という、『マイ・ヒストリー』」であると説明している。
「これまであまり語ることのなかった幼少期から、3年前に自ら主治医として看取った妻との日々まで、生涯をつづることで、読む人へ、どんな時代でも”愛”と”理想”と”挑戦”を失ってはいけない、と日野原氏はメッセージします」と同社は本書について説明。「これは自伝という形の、現代人への励ましの書でもあるのです」と付け加えている。
プロローグに続く7つの章とエピローグからなる本書には、105歳になる著者のこれまでの人生が詳細かつ克明に記されている。
第1章「負けず嫌いの『しいちゃん』」で、著者は自身が負けず嫌いで頑固な子どもだったと記し、それが本書の題名にも表れている。
その後、第2章「若き日にまかれた種」、第3章「『医者』への道を歩む」、第4章「アメリカ医学と出合って」、第5章「『与えられた命』を生かすため」、第6章「いのちのバトン」、第7章「妻・静子と歩んだ日々」と続き、最後にエピローグ「人生は『クレッシェンド』」で著者自身がイメージする自らの最期などについて記している。
本書の中で著者は自らのキリスト教信仰についてもたびたび述べている。本書を読む人は、それが105年にわたる著者の歩みとどのように関わってきたのか、深く知ることになるだろう。本書に記されたその生き方から、私たちは何を学ぶことができるだろうか?
日野原重明著『僕は頑固な子どもだった』(2016年10月、ハルメク、288ページ、本体1500円+税)