香港で大きな社会ニュースになった実話をもとに描き、2015年に香港映画界で年間興行収入1位に輝いたエイドリアン・クワン監督作品「小さな園の大きな奇跡(原題:Little Big Master)」が5日、新宿武蔵野館リニューアル・オープニング・ロードショーとして公開されるほか、全国でも順次公開される。
09年、資金不足で先生が1人もいなくなり、女の子5人の園児が取り残されてしまった、郊外の村にある幼稚園のニュースが香港で話題になった。新しい園長が決まらないと園は閉鎖となり、5人の園児の行き場がなくなってしまう。この危機に、村はわずか4500香港ドル(約6万円、普通の園長の6分の1〜8分の1)という給料で園長を募集しているというのだ。このニュースは新聞やテレビで大々的に取り上げられ、さらに、そんな薄給にもかかわらず、かつて有名幼稚園の園長だった女性が応募して園長になったという続報が、大きなニュースとなった。
この実話を映画化したのが本作。香港映画といえば、キョンシーやカンフー、少林寺拳法と、アクション映画の印象が強いかもしれないが、本作は理屈抜きで笑顔になれる、感動作を超える、わんわん泣ける号泣作だ。たった5人の子どものために全てを投げ打った1人の女性園長、決して夢を諦めなかった彼女を支えた夫、5人の園児とその家族が起こした奇跡の物語。銃撃シーンもアクションシーンも一切ないが、見事香港映画NO.1に輝き、アジアフォーカス・福岡国際映画祭2015では観客賞を受賞、第35回香港電影金像奨では主要5部門にノミネートされ、大好評を博した。
監督は、この女性園長のニュースを知って以来、頭から離れなかったという新鋭のエイドリアン・クワン。クリスチャンであるクワンは、香港の「ゴスペル監督」と呼ばれ、キリスト教団体で知り合った心理カウンセラーのハンナ・チャンとのコンビで、これまでに何本ものゴスペル映画を生み出してきた。本作もクワンとチャンの共同脚本。また、ジャッキー・チェン主演の映画「香港国際警察 / NEW POLICE STORY」などの大ヒット作を連発するベニー・チャンが、クワンの熱意に動かされてプロデューサーを務めた。
主役の夫婦を演じるのは、香港ポップス界の大スターで、「香港映画のラブコメ女王」とも呼ばれる人気女優ミリアム・ヨンと、15年に3年連続マネー・ランキング1位に輝いた名実ともに誰もが認めるトップ俳優のルイス・クー。クーがアクションなしの役を演じるのは非常に珍しいが、「自分が関わった映画の中で、自己犠牲の愛を描いたこの映画は、この数年で最も意味があるものだと思う」と、自ら製作費を出資するほどに本作にほれ込み、真面目で愛情あふれる夫を熱演した。さらに、脇を固めるのは、映画「福星」シリーズに出演していたリチャード・ン、スタンリー・フォンなど往年の香港映画ファンも歓喜する名俳優たち。香港映画の新しい魅力に触れることができる映画としても必見の1本だ。
そんな豪華な俳優・製作陣以上に、見る人全ての心を奪うのは、何といっても5人の小さな園児たちのかわいらしさといじらしさ。オーディションに応募した400人以上の子どもの中から選らばれた少女たちの名演を、劇場の大画面で見届けてほしい。
■ ストーリー
有名幼稚園の園長だったルイ・ウェホン(ミリアム・ヨン)は、エリート教育に疲れて退職。博物館で働く夫ドン(ルイス・クー)と世界1周の旅に出る予定だった。そんなある日、テレビで見たのは、閉園危機にある幼稚園のわずか4500香港ドル(約6万円)の園長募集のニュース。家庭の事情で転園できない5人の園児が残され、新園長が来ないと園は閉鎖、5人は行き場を失う。ルイは園長に応募する決意をするのだが・・・。
本作は、映画館「新宿武蔵野館」「新宿シネマカリテ」などを経営する武蔵野興業の配給部門「武蔵野エンタテインメント」の初の買い付け作品で、「面白い映画はないか」と香港を訪れた社長がその場で買い付けを決断した自信作でもある。5日の公開は、新宿武蔵野館リニューアル・オープニング・ロードショーを飾り、全国でも順次公開される。