西アフリカでエボラ出血熱に感染した2人の米国人援助従事者の真実の物語と、時間との闘いとなった彼らの帰国後の治療現場を取り上げた新作ドキュメンタリー映画の公開へ向け、準備が進められている。
映画「暗闇に立ち向かって(原題:Facing Darkness)」は、西アフリカ諸国で猛威を振るい、1万人以上の死者を出したエボラ出血熱の大流行と戦った者たちへのインタビューを取り上げている。リベリアと米国で撮影されたこの映画は、今世紀最悪の伝染病の1つを食い止めるために、命を懸けた真の英雄たちの人生に光を当てている。エボラ出血熱は、西アフリカの3カ国(リベリア、ギニア、シエラレオネ)で2万8千人が感染し、約1万1千人が犠牲になった。
エボラ出血熱に感染した2人のうち1人を派遣し、この映画を製作した米国のキリスト教援助団体「サマリタン・パース」の総裁兼最高責任者であるフランクリン・グラハム氏は、クリスチャンポストへ寄せた声明で、「サマリタン・パースの従事者たちは、世界の大部分が無視していた危機に対する最後のとりでを守ったのです」と述べた。
「何百人もの人々が瀕死(ひんし)の状態にありながら、事態はただ悪くなる一方でした。エボラ出血熱がケント・ブラントリー医師とナンシー・ライトボル衛生士を襲ったとき、私たちは彼らを治療のために帰国させる必要があると分かりました。それは彼らが生き延びる唯一のチャンスでした。しかし、それはかつて誰もしたことのない試みでした」
エボラ出血熱の大流行は、2014年3月に発生。同年6月まで、途方もない大流行として世界を騒がせるニュースとなった。当時、医療宣教師として派遣されていたブラントリー、ライトボル両氏は、急増した「殺人ウイルス」と戦うため、リベリアの首都モンロビアにあるキリスト教団体「エターナル・ラブ・ウィニング・アフリカ」(ELWA)の病院で働いていたが、彼ら自身もエボラ出血熱に感染した。
2人の感染の知らせが届くと、サマリタン・パースのチームは直ちに2人を帰国させるため奔走した。帰国させて治療を受けさせることだけが、2人を助ける唯一の選択肢だった。前例のないことだったが、2人は治療のために米国に帰国することが許され、そして癒やされた。
「暗闇に立ち向かって」は、ブラントリー、ライトボル両氏の米国への帰国と治療、そして最終的に治癒に至る驚くべき真実の物語を、恐れに立ち向かい打ち勝つ感動に満ちた信仰のストーリーと共に取り上げている。
「信仰とは、あなたを安全にする何かではありません」。リベリアにとどまり、エボラ出血熱と戦うことを決意したとき、ブラントリー氏は声明でこのように述べた。「あなたは死に真っ向から対峙し、『今日、私はどういう者になるか?』を決断する必要があります」
2人はリベリアで、他のさまざまな課題にも直面した。状況が複雑化した要因は、長年続く内戦や、リベリアの人々が指導者をほとんど信頼せず、病気の被害を拡大させたとして、援助者たちを非難しさえすることであった。しかし、サマリタン・パースのチームは彼らに仕え続けた。
エボラ出血熱の感染が広がるリベリアへの援助を継続することを決断した時のことについて、グラハム氏は「危機のあるとき、神は私たちがそこにいることをお望みになっていらっしゃると私は思います」と語った。「神は私たちをある理由のためにそこに置かれました。そして神は、私たちがその何かを行うことを期待していらっしゃるのです」
リベリアは今、エボラ出血熱の終息が宣言されている。これは、150万人に達した大規模な公衆衛生教育プログラムによる文化改革が、感染拡大の阻止に役立ったためである。サマリタン・パースは、その教育プログラムを支援してきた。
「暗闇に立ち向かって」は、ブラントリー、ライトボル両氏を助ける物語だけではなく、人々が他者への奉仕において、恐れに勝る憐(あわ)れみを選び取ったときに一体何が起こるかを示している。
「暗闇に立ち向かって」は、既にアコレード国際映画祭で優秀賞を受賞しており、ファゾム・イベンツの配給で2017年3月30日、全米各地の映画館で1日間のみ上映される。