「やっぱりだれの子どももころさせない」をテーマに、「安保関連法に反対するママの会」(通称:ママの会)が17日、衆院第2議員会館で院内集会を行った。参加したのは、全国から集まったママの会のメンバー約50人と超党派の衆参両院議員17人。10日までの3週間に国内外から集まった1450人以上のメッセージを、集会に出席した民進党、共産党、自由党、社民党、沖縄の風の各議員に手渡した。
メッセージには、「息子が自衛隊員です。人を助けるため、守るために息子は自衛官になりました。人を殺したり、殺されるためになったわけではない。日本人は、自国民も他国民の命も大切。『海外派遣はしない』と主張するべきだ」という、自衛官の息子を持つ宮城県在住の家族からの切実な思いも含まれている。
集会に参加した共産党の小池晃書記局長は、「南スーダンは、『衝突』ではなく『戦闘』状態にある。武器と武器を持って衝突すれば、そこは明らかな『戦闘』状態といえる。現地では、7月に300人が戦闘によって命を落とし、ここ1週間でも60人が亡くなったと聞いている。7月11日には、国連施設のすぐそばのホテルが襲撃された。襲撃したのは、南スーダンの政府軍。ホテル内にいたのは、各国から集まった支援関係者だった。この人たちは、すぐに国連PKOに自分たちの身を守ってくれるよう要請した。まさにこれが『駆けつけ警護』。自衛隊がもしこの現場にいたら、武器を取って戦う相手は、南スーダンの政府軍になる。これは、明らかな戦闘行為ではないだろうか。法律ができたときは、ただの『字づら』の問題だったが、まさに現実の問題になりつつある。実際、欧米諸国は、あまりにも危険な状態であることから、実働部隊を撤退させている。南スーダンから直ちに自衛隊は撤退するべき」と訴えた。
北海道から参加した現役自衛官の母、平和子さん(仮名)は、自らの言葉で議員たちにその思いを伝えた。
「今日は、第一線で交渉に当たっている議員の方々に、一母親としての思いを知っていただきたくて、北海道から伺いました。現在の南スーダンは、当初とは比べものにならないほど状況が悪化しています。しかし、現場にいる自衛官たちの命の叫びは聞かれることなく、何事もないかのように、来月には青森の部隊が出発することが決まっています。北朝鮮のニュースが報じられると、日本の防衛予算は跳ね上がり、テロ事件の増加に伴って、世界中の軍需産業が史上空前の活況に沸き返っていると聞いています。この社会現象は連動し、日本の自衛隊もこれに利用されていると思っています。息子は、大切な家族を持ち、友人にも恵まれた優しい子です。自衛官になり、海外支援などで頼りにされるような人になることを願っています。私は、このような活動をするに当たり、息子一家とは距離を置いています。おかしな戦争に巻き込まれて死なれるよりは、恨まれても声を上げた方がましと思い、頑張る日々ですが、息子の幼い日の夢を思うとやはり涙が止まりません。どうかお願いします。平和な日本にしてください」と話し、深々と議員らに頭を下げた。
カトリック信徒でママの会のメンバーである保田諭子さんは、「聖書に『平和をもたらす人は幸いである』という有名な一節があります。真の強さとは暴力の行使ではなく、他者を信頼し、人々の間に信頼を築いていくことだと、イエス様は私たちに示してくださっているのです。実践していくのは簡単なことではありませんが、日本が南スーダンですべきことは、軍事的な協力ではないと思います。私は、自衛隊が南スーダンに派遣されることに、大きな危機感を持っています。実際にはそれほど活躍が期待されていない不安定な地域に行って、かえって保護対象の安全性を損なうような軍事行動をするために、日本の自衛隊があるのでしょうか? 日本がすべきことは、軍事的な貢献ではありません。それは『平和をもたらす人』の行いとしては到底あり得ないことだと思います。現実問題として、食糧などの緊急人道支援、インフラの再建など、軍事以外の分野で現地の人々に求められている協力はたくさんあります。日本はそういった分野でこそ、支援の実績を積み重ねていくべきだと思います」と話した。
集会後、地域ごとに分かれたママの会のメンバーが、各地域選出の議員の部屋にメッセージを持って尋ね、手渡した。「議員さんの部屋に行くなんて初めてなので、とても緊張する」と話すママたちも、「だれの子どももころさせない」の言葉を胸に、一歩ずつ歩みを進めた。ママの会の今後の活動は、SNSを中心に話し合われる予定。