「安保関連法に反対するママの会(通称:ママの会)」ら5団体が立ち上げた「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(通称:市民連合)」は5日、JR新宿駅西口前で団体初となる街頭演説を行った。「初売り」などを目当てに新宿駅周辺を訪れる買い物客などでごった返す中、主催者発表で5000人を超える人々が集まり、思い思いのプラカードを手に演説に耳を傾けた。
登壇したのは、賛同団体各会代表者のほか、日本共産党の志位和夫委員長など野党代表議員の姿もあった。各団体は、「野党共闘」を強調。安倍政権を痛烈に批判した。
熊本県の「安保関連法に反対するパパママの会」からスピーチした瀧本知加さんは、同県で全国に先駆け、市民と野党から統一候補を擁立することができた経緯を説明した。
「私たちが、政治に対して最大限に力を発揮できるのは、選挙権を行使すること。今夏の参院選では、自民、公明議員を落選させ、安保関連法に反対し、立憲主義を取り戻す統一候補を立たせることが必要不可欠だ」とし、強行採決後、もう一度選挙に関わっていくことを決心した。その危機感を共有した県内の団体が集まり、▽集団的自衛権行使容認の撤回、▽11の安保関連法の廃止、▽立憲主義を取り戻す、の3点で野党が共闘するよう要求してきた。
熊本県での動きは、過去の運動を参考にしたものでもなかった。熊本県には、水俣病の問題、川辺川ダムの問題など、権力の横暴に対して、野党と市民が結束して活動してきた歴史があった。それに加え、東日本大震災で移住してきた人たちが活動に加わり、新たな活動の形として、今回の動きに至ったことを説明した。
最後に「私たちが子どもに残すべきものは、『平和な未来』。そのためには、平和を大切にする議員を国会に送り出すことが必要。民主主義をないがしろにする議員はいらない。熊本から全国にエールを送りたい」と述べた。
上智大の中野晃一教授は、「選挙が行われるのは、ここ新宿駅ではない。国会前でもない。私たち一人一人が住む街で行われる。その地域の候補者に直接話してみることは必要。『私たち市民は見ているよ』ということを、もっとアピールしてほしい。選挙に関心のない人たちに、どうやって危機感を持って選挙に行ってもらうかも課題。われわれ一人一人が考えていくべき」と話した。
蓮舫参議院議員(民主)は、今春、低所得高齢者に対し、1人3万円の給付金が支払われる制度について触れ、「給付金が支払われるのは、5月か6月。安倍政権は、このタイミングでばらまいて、目先を変え、支持率を上げようとしている。しかも、子どもの貧困対策には、『民間の寄付』に頼ると言っている。その寄付金、いくら集まっていると思いますか? たった300万円ですよ!」と痛烈に批判を繰り返したが、最後まで「野党共闘」の文字は聞かれなかった。
志位氏は、「市民革命が起こり、こうして市民連合が立ち上がったことは、非常に喜ばしい」と話した。また、昨夏の強行採決に対し、「立憲主義を無視して、権力が暴走したら、どうなるか? 独裁政治の始まりではないか」と話した。「政治が間違えを犯したら、罰するのは主権者である国民のみなさん。今夏の参院選の審判は重要。まずは、自民・公明の与党を少数派へ転落させる。参院選での1人区すべてに勝利する。そのためには、野党がバラバラでは勝てない」と野党共闘の必要性を示唆した。
「SEALDs(シールズ)」のメンバーで大学3年生の本間信和さんは、昨夏、シールズが街宣やデモを行う中で、「SNSなどを通して、いわれのない誹謗中傷に悩んだ日もあった」と話した。それでも彼らが活動をやめなかったのは、大きな確信があったからだった。「この国の主権者はわれわれである。われわれには、この国の政治を変える力がある。この国の政治を動かすのはわれわれである」と力強く語った。
最後に登壇した学習院大の佐藤学教授は、「次の選挙では、必ず政治転換を! 私たち、市民が政治を動かす。市民が連合し、野党が共闘すれば、日本の未来が開かれる」と話した。
演説がすべて終了した後、シールズの本間さんが「民主主義ってなんだ!」と叫ぶと、5000人の聴衆は、「これだ!」と応答した。