30日午後2時から4時まで、時折降る雨にもかかわらず、国会周辺と全国で安保関連法案の廃案を求める「戦争法案廃案!安倍政権退陣!8・30国会10万人・全国100万人大行動」が行われ、国会周辺で12万人、全国で数十万人(いずれも主催者発表)が参加した。
国会正門前ステージでは、仏教者やキリスト者などの平和運動団体「宗教者九条の和」代表で聖護院門跡(京都市)門主の宮城泰年氏が宗教者を代表してスピーチを行った。1931年生まれの仏教指導者である宮城氏は、戦時中、中学2年から15歳で終戦を迎えるまで竹やりで軍事教練に明け暮れ、それを「批判することすら許されなかった」と語った。
そして、「憲法9条をないものにした場合、私たちの人間性がたちまち失われていくことは、2012年に自民党が『公共と公の秩序』を優先する改憲草案にはっきり出ている」と指摘。その上で、政府に対して声を上げるために、「私たちは最後まで心から偽りのない生き方をしなくては」と訴えた。
「SEALDs」(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)設立メンバーの奥田愛基さんは、安倍晋三首相が21日に参議院特別委員会で民主党の蓮舫議員に対し、「そんなことどうでもいいじゃん」と野次を飛ばしたことに触れ、「どうでもいいなら総理を辞めろ!」などと叫んだ。また、続いてスピーチを行った音楽家の坂本龍一氏と握手する場面も見られた。
日本バプテスト連盟の牧師でホームレス支援全国ネットワーク代表の奥田知志氏は、「家族のことを話そう」という見出しの東京新聞の記事(23日付)で、長男の愛基さんが仲間たちと今年5月にSEALDsを立ち上げたことなどを語っている。
一方、「安保関連法案に反対するママの会」のメンバーが、「ママは諦めません。絶対に戦争法案を止めます」と決意を表すると、参加者は大きな拍手を送った。
沖縄のヘリ基地反対協議会共同代表の安次富浩氏は「安倍政権は安倍サタン政権だ」と批判。「安倍政権を打倒しましょう。戦争法案、辺野古基地建設、さらに原子力発電所の再開を絶対に止めていく」と呼び掛け、「そのことに私たちの未来がある」と語った。
他に、4人の野党議員に加えて、「戦争させない1000人委員会」呼び掛け人の一人でルポライターの鎌田慧氏、法政大学教授の山口二郎氏、講談師の神田香織氏、映画監督の神山征二郎氏、法政大学名誉教授の袖井林二郎氏、過剰警備監視国会議員団のメンバーで参議院議員、ジャーナリストである有田芳生氏、「安全保障関連法案に反対する学者の会」呼び掛け人の一人である池内了氏、作家の森村誠一氏、明治大学教授の浦田一郎氏、日本弁護士連合会の山岸良太氏などがスピーチを行った。
国会正門前でこの行動に参加した、日本基督教団西方町教会員で同教会九条の会メンバーの高橋巨泰(なおやす)さん(71)は、集会の終了後、本紙に対し、自らが高校1年生だった岸信介政権の時に、60年安保条約の改定がされたのを思い出しつつ、「若い人たちがようやく参加しているのがいいと思う。自主的に、政治的スタンスに関係なく立ち上がっている。女性の反対が多い。ようやく根付いているんだと思う」と感想を語った。
高橋さんは、日本国憲法が作られたときに連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)で女性の権利を定めるよう提言した故ベアテ・シロタ・ゴードン氏に言及し、「女性と若い人たちが主役になりつつある。希望をそこに見いだしたい」と語った。
また、この集会でのぼりを掲げた、安保法案廃案などを求める上智大学教職員有志のメンバーで、同大総合人間科学部教授の澤田稔氏は本紙に対し、「今まさにこの国の歴史が動いている、それを現場で目撃しているという気がしました。これこそ(党派性や立場を超えた)社会的連帯なのだなと深い感慨を覚えました。教職を目指す本学学生から、のぼりと私を見て声を掛けられたことも、非常に頼もしく、うれしく感じました。どんなに政府が強がっても、あれは嫌でしょう。それだけのインパクトを残したと思います。まだまだ、このうねりは拡大すると感じます」と語った。
この大行動を主催した「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動」実行委員会の高田健氏は、この集会の終わりに、参加者数が同実行委員会の集計で12万人、全国で数十万人と発表し、「(大行動は)大きく成功しました。本当にみなさんのご協力に感謝いたします」と語った。