「安保関連法に反対するママの会(通称:ママの会)」「SEALDs(シールズ)」ら5団体の有志が、来夏の参議院議員選挙で野党候補者を支援するための団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(通称:市民連合)」を設立し、20日、都内で記者会見を開いた。会見には、憲法学者の中野晃一上智大学教授、山口二郎法政大学教授(立憲デモクラシーの会)、教育学者の佐藤学学習院大学教授(安全保障関連法に反対する学者の会)、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の高田健さん、ママの会代表の西郷南海子さん、シールズから諏訪原健さんがそれぞれスピーチを行った。
同団体は、「戦争法の廃止を求める統一署名(2000万人署名)」を共通の基礎としている。また、3つの重要な要素として▽安全保障関連法の廃止、▽集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を含む立憲主義の回復、▽個人の尊厳を擁護する政治の実現に向けた野党共闘を要求することを掲げている。具体的には、参議院選挙における1人区(32選挙区)において、野党候補者を1人に絞り込むことを要請。同団体の主義主張に賛同する場合は、無所属議員の応援にも回る予定だ。その場合は、当選後に特定の政党に入党することを防ぐため、市民連合との協定を結ぶことを前提とする。設立の経緯について、山口教授は、「民主党の枝野幹事長の呼び掛けで、安保法制に反対した諸団体と野党の間で12月までに3回の意見交換会を行ってきたのが、この5団体であった。今後も、賛同団体、賛助団体は順次公表していく予定」と説明した。
同団体の具体的な活動として、2000万人の署名を集め、与党に猛烈なプレッシャーをかけることを目的の一つとし、1月からは各地での街頭演説、シンポジウムなどを開催する。手始めに、参院選の前哨戦ともいえる来年4月の北海道5区衆議院補欠選挙時には、非自民候補の応援にも駆けつけ、勝利することを目標としている。また、すでに野党統一候補擁立に向け、準備の進んでいる地方には、積極的に赴き、市民団体と連携をしながら、与論を高めるアピールを行う。
西郷さんは、「今夏、各地のママたちがたった一人でも勇気を出して立ち上がった小さな一歩は、今やおのおのの地域でつながりと広がりを見せている。今夏の行動を通して、自分の子どもだけではなく、世界の子どもたちの命にも思いをはせ、『だれの子どもも殺させない』の意味を感じている。とりわけ、沖縄のママたちは、毎日のように体を張って、新基地反対の行動を起こしている。なぜ、このような行動をママたちがしているのか。それは、武力行使が当たり前の世の中にしたくないからだ」と話した。また、今朝までの2週間、ヨーロッパに出張していたことを話し、ロンドンでもスタンディングをして、非戦の訴えをしたと報告。「イギリスは、シリアの空爆に参戦している。それに対し、ロンドンでも、ママたちが赤ちゃんを抱っこしてデモに参加していた。『だれの子どももころさせない』は、世界共通のママの願い。子育てをしている私たちは、行動することで子どもたちに希望を見せたい。『二度と戦争はしない』という姿を見せていきたい」と話した。今後、ママの会では、パンフレットを2万部増刷。すでに1万部の予約が入っており、全国の幼稚園や保育園にも配布する予定だ。
また、「参院選の争点について、安保法制以外の点でもそれぞれの立場から、政策の提言などを行っていくのか」との質問に対して西郷さんは、「今までは、『安保関連法』一点に絞って活動を続けてきた。しかし、9月に行われた全国のママを集めたミーティングでは、口々に東日本大震災を機に『このまま、政府の言いなりになっていたら、自分の子どもたちを守ることさえできない』とママたちが話していた。今後、参院選を見据えるとき、辺野古の問題や放射能の問題は無視できないと思う」と話した。
今夏の「安保反対」の動きで大きく変わったのは、「野党議員の意識」だと山口教授は話す。国会前で市民らが大声で叫ぶことによって、議員たちは奮い立ち、徐々に行動を起こしていった。市民のうねりによって政治が動いていったのだ。「これが民主主義なのでは」と山口教授。来年早々から繰り広げられる市民も巻き込んだ熱い選挙戦に、注目が集まりそうだ。