「安全保障関連法に反対する学者の会」と学生団体「SEALDs(シールズ)」などによるシンポジウム「岐路に立つ日本の立憲主義・民主主義・平和主義」が25日、法政大学市ケ谷キャンパス(東京都千代田区)で開催された。当日は、1000人の参加を予定していた会場があっという間に埋まり、追加の補助席や立ち見も含め、1300人(主催者発表)が参加。満席のため入場規制がかかるほどだった。司会は、「学者の会」の発起人の一人である佐藤学・学習院大学教授と、シールズのメンバーで上智大学の学生である芝田万奈(まな)さんが務めた。
第1部では、広瀬清吾専修大学教授、樋口陽一東京大学名誉教授、小林節慶応義塾大学名誉教授、シールズの大澤茉実(まみ)さん(立命館大学学生)が基調報告を行った。その後に行われたスピーチでは、池内了名古屋大学名誉教授、山岸良太日本弁護士連合会(日弁連)問題対策本部長、シールズの豊島鉄博さん(専修大学学生)と久道瑛未(えみ)さん(東北大学学生)が登壇した。
基調報告の中で樋口名誉教授は、「私たちの国は、戦後70年の間、『立憲』『民主』『平和』の3つの価値を同時に掲げ、追求してきた。その支えが日本国憲法であった」と指摘。法曹界からも今回の安保関連法について「違憲」の声が大きいことに触れ、「国の運命、世界の運命、地球の運命を揺るがすことを誰かが決断しようとしているとき、法の専門家が『それは危ない』と警鐘を鳴らすことは、法律家としての職業上の義務である」と述べた。最後には、若者が国会前で「なめんなよ」と声を上げたことに触れ、「これは非常に大事。一人一人が誇りを持って行動を」と語ると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
今年6月に衆議院憲法審査会に参考人として参加し、9月の中央公聴会では公述人として参加した小林名誉教授は、このシンポジウムの会場として当初予定していた立教大学が、「純粋な学術的な内容ではない」として会場の提供を拒否したことについて、「政治学者、憲法学者に政治について話すなというのは、『大学人』として矛盾がある」と指摘した。
シールズ関西のメンバーである大澤さんは、「私は、小さい時から『良い子』を求められてきた。学校に従い、空気を読んで生きてきた。偏差値が高ければ『勝ち組』だと思った。そして、いつの間にか自分の感情を表すことが怖くなり、黙ること、教室や社会に順応するのが『普通』だと思ってきた。しかし、その『普通』だと思っていたことが、今夏、『普通』ではなくなった。昨日までファッションの話しかしなかった学生が政治を語り始め、パソコンと本の前から離れなかった学者たちが路上に出て、声を上げ始めた。多くの芸能人がタブーを破って、自分の意見を主張し始めた。『当たり前』に順応するのではなく、何が『当たり前』かを考えることが必要。空気を読んでいては、空気は変わらない。武器を持って戦うことが『普通』なら、私はその『普通』を変えたい。私の言っていることは、ただの『理想論』や『希望』と言われるかもしれない。しかし、『希望』を語れなくなったら、終わりなのではないか」などと語った。
この大澤さんの心からの叫びがこもったスピーチには、壇上に上がった学者、会場に集まった参加者、詰め掛けた報道陣の中にも涙する姿が見られた。
第2部では、10分ずつの短い報告を登壇者が行い、その後、ディスカッション形式でシンポジウムが行われた。登壇したのは、長谷部恭男(やすお)早稲田大学教授、中野晃一上智大学教授、小熊英二慶応義塾大学教授、シールズの千葉泰真(やすまさ)さん(明治大学大学院生)と奥田愛基(あき)さん(明治学院大学学生)の5人。
千葉さんは報告で、「1000億円のイージス艦を購入して、『抑止力』を得た気分になるのではなく、1000億円をかけた文化交流を。互いに交わることで得るものは、将来万一、外交危機に陥ったときに、イージス艦よりもはるかに戦いを抑止する力になるのでは」と語った。また、シンポジウムの中では、「日本を代表する大学の先生たちと、われわれ学生が、こうして一緒の壇上に立って民主主義を語ること、また、国会前で共に声を上げられたことは率直にうれしい」と感想を述べた。
最後に話をした奥田さんは、「政治に対するイメージは『難しい』『面倒くさい』だった。国会中継では、国会議員が寝ている。時の総理大臣は漢字が読めないとニュースになるなど、今から考えれば、平和な時代だったと思う。しかし、昨年成立した特定秘密保護法のあたりから、何かがおかしいと感じ始めた。デモをやろうとしたが、やり方も分からなかった。それを教えてくれたのは、有名な先生でも大学の先生でもなく、グーグルだった。一生懸命に検索して、デモのやり方を覚えた。ある学者の先生が『ガキを見直した』と言ってくれたが、私たち『ガキ』も難しい本をうなりながら読んだりして、夜な夜な頑張っている。『若者が政治に無関心だ!』と批判されるが、大人は政治に関心があるのか? 私たちは、授業を受けるだけでなく、学校の外にも学びがあることを知った。国会前にも大学の先生たちが来てくれた。一緒にスピーチを行う『抗議』の場こそが『講義』だった」と話した。