もともとは宗教改革者ジャン・カルヴァンの流れを汲む日本キリスト教会の教会で洗礼を受けたという、著者の佐藤優氏。本書は、同教派の大森教会(東京都大田区)で昨年11月に青年向けに行われた、元外務省主任分析官で作家の同氏による講演「改革長老教会の伝統と神学―21世紀における意味を考える」・座談会・質疑応答とフリートークを収めた1冊である。
現在は日本基督教団賀茂教会(京都府京都市)に籍を置いているという佐藤氏は、本書で「キリスト教徒であって日本人であるとはどういうことか」について語り、教会形成への提言をしている。
これまで『同志社大学神学部』(光文社新書)、『神学の思考』(平凡社)、『神学部とは何か』(新教出版社)などを著した佐藤氏だが、本書では自身の内面に踏み込んだ信仰告白的な著作となっている。版元のキリスト新聞社は、本紙に対し、「佐藤優ファンのみならず、佐藤優について知りたいという人への、入門書としてもお読みいただけます」と述べている。
同社によると、「質疑応答やフリートークでは、神学についてだけではなく、信仰や、聖書翻訳、反知性主義、国際政治、沖縄問題に至るまで、その場で出されたさまざまな質問に、外交官としての経験、神学の知識、自身の信仰から縦横無尽かつ簡潔明瞭に答えていく様は圧巻です」という。
日本におけるキリスト教の土着化の問題や、信仰と学知(体系知)の問題について語る佐藤氏は、「キリスト教信仰(とりわけプロテスタント信仰)を持つ者は、他の宗教(宗派)の信仰を持つ人、あるいは信仰を持たない人よりも、この世界の現実をよりリアルに認識することができる」という。本書を読む人は、同氏のバックグラウンドとともに、改革長老教会の文脈で教会形成について考えることができるだろう。
佐藤優著『現代に生きる信仰告白―改革派教会の伝統と神学』(2016年7月22日、キリスト新聞社、163ページ、定価1700円[税別])