米国務省は10日、世界人口の約75パーセントが宗教的な自由の厳しい制限を受けていると発表した。
米国務省が発表した「信仰の自由に関する国際報告書」(2015年版)によると、世界の約4分の1の国々(世界人口の約75パーセントに相当)において、政府の政策や、個人および団体、または社会的集団による敵対行為によって、「信仰の自由が抑制されている」という。
「世界の国々の政府は、宗教集団に対する規制を強化している。特に宗教的少数派や、当事国において非伝統的とみなされる宗教に対してそうしている」と、同報告書は伝えている。
研究者らの調査によると、信仰の自由に対して「一定の制限」を加えている国の数が過去20年間で急増しており、世界の国々の90パーセント近くにまで達しているという。「多くの国々おいて、(宗教団体として認可を受けるための)登録要件の増加と、信仰の自由の全体的な状況悪化の間に密接な関連がある」「またそれらの国々では、宗教的少数派や新興宗教は、政府の制限強化によって活動範囲が不平等な扱いを受けている」と同報告書は述べている。
特に冒涜(ぼうとく)法について強調しており、米国務省の国際信仰自由特使であるデイビッド・サパースタイン氏は、「(冒涜法は)信仰を低下させたり、致命的な影響をもたらす場合さえある」と述べている。
「世界の約4分の1の国々には冒涜法が存在し、1割以上の国には背教を罰する法律か政策があります。政府はそういった法律を利用して、宗教的少数派を脅したり、抑圧しています。冒涜や背教の訴えによる社会暴力を防ぐために、政府が適切な対応を取れていない場合が非常に多いのです」とサパースタイン氏は言う。
「そういった訴えが、実は他の目的で行われた虚偽の訴えであることが明らかになった場合、政府が加害者たちに法的な責任を取らせることができないケースが多くあります。政府のそういった失態は、法の支配を弱体化させ、暴力に訴える者や、虚偽の冒涜罪を主張する者たちが野放しにされる風潮を生み出しています」と、サパースタイン氏は指摘している。
米国務省は同報告書で、パキスタン、スーダン、サウジアラビア、モーリタニアの各国が、冒涜や背教に対して特に厳しい罰を科していると強調。「そのような法律は、国際的に認められている人権の自由に挑戦し、侵害するものだ」としている。
また同報告書は、イスラム過激派組織の「イスラム国」(IS)とボコ・ハラムについて、昨年の「信仰の自由に対する世界最悪の虐待者に位置付けられている」としている。
同報告書は、ヤジディ教徒やキリスト教徒、シーア派イスラム教徒などの宗教的少数派に対するISの「残虐な戦略」や、ボコ・ハラムの「暴力的なイデオロギーを批判したり、反対したキリスト教徒やイスラム教徒に対する無差別な暴力的攻撃」を責めている。また、シリア政府が、スンニ派イスラム教徒や他の宗教的少数派を虐待したと述べている。
国民の信仰の自由を否定している国としては、北朝鮮、エリトリア、ミャンマー、ベトナム、中央アフリカを挙げた。北朝鮮では、信仰の自由が「ほとんど存在しないまま」だとしている。
ロシアの伝道規制法は、「宗教的少数派の団体登録抹消や宗教活動、土地および礼拝施設の購入に対する規制強化」のために政府に利用されている、と同報告書は述べている。
しかし米国務省は、信仰の自由における肯定的な潮流についても報告している。反ユダヤ教や反イスラム教の憎悪と闘う、欧州の方策を称賛している。また、2015年12月に、イスラム過激派組織「アルシャバブ」の攻撃からキリスト教徒らを守ったケニア人イスラム教徒らは、宗派を超えた絆の模範であるとしている。
教皇フランシスコによる2015年の中央アメリカ訪問についても言及し、宗教的指導者らが「宗教者間の信頼回復に甚大な貢献をした」としている。