スマートフォン用のゲームアプリ「ポケモンGO(ゴー)」が大流行して、ポケモンを捕まえようと何千人ものプレーヤーが、米国各地の教会へ殺到している。こうした動きを伝道の好機だと積極的に捉える牧師がいる一方で、教会の敷地からこの現象をシャットアウトしたいと考える牧師もいる。
ポケモンGOは7月に米国や欧州諸国、日本などで発売された拡張現実(AR)を用いたスマートフォン用の位置情報ゲームで、仮想のモンスターであるポケモンたちを、現実の世界を舞台に探し回るというゲームだ。これが世界的な人気となって、既に1億以上もダウンロードされている。
ポケモンGOでは、プレーヤーがポケモンを捕まえたり、戦ったりする場所として、さまざまな現実の場所が使われる。教会や宗教施設も例外ではなく、「ジム」や「ポケストップ」などのゲーム上のスポットとして使われている。
しかし、見知らぬ人がポケモンを捕まえようと敷地内に入ってくるのを目撃する教会関係者は多いが、それに対して教会が対処できることは、今のところそれほど多くないようだ。
適切であれば利用すべき
オレゴン州ポートランドにあるコロサイ教会のチャック・ボマー牧師は、クリスチャンポストに対し、3つの地域にある教会のうち2カ所と、教会が運営する非営利のコーヒーショップがポケストップに選ばれていたと言うが、ポケストップの指定に関して教会は「ノータッチ」だと話す。
ボマー氏によると、特にナイキやインテルの従業員と思われる見知らぬ人たちが、昼休みにポケモン・ハンティングをしながら歩き回っているのを、教会関係者が教会の敷地外で見掛けたという。
ポケモンが誕生して20年、クリスチャンの批評家の中には、超能力で敵をどう打ち負かすかを教える「悪魔的」存在としてポケモンを見なす者もいたが、ポケモンGOが伝道の好機を提供してくれることから、今回の大流行を利用しようとする教会関係者が出てきた、とボマー氏はクリスチャンポストに語っている。
「教会周辺でそうした人たちと出会うようになって、これまでに会ったこともないような人たちに出会う良い手段だと考える信徒も少しですがおります」とボマー氏。「私たちがすることは、善かれ悪しかれ、つまりゲームであれ、科学技術であれ、何であってもそうですが、悪のために使われる可能性があるとして批判することは実に簡単ですが、善のためであればそれを使うという選択肢も出てくるわけです」と話す。
ボマー氏の教会には20代の若者たちも何人か出席し活動しているが、彼らにこの機会に乗じるよう「指導する」必要はなかったという。若者たちが率先して「この機会を用いよう」としたことがとてもうれしい、とボマー氏は述べている。
「未信者の人たちと関わる何らかの適切な手段を、私たちは探さなければなりません。未信者の人たちと関わるどんな手段でも、適切であればそれを利用してしかるべきなのです」とボマー氏は主張する。
安全上の問題を指摘する声
ポケモンを探して教会の屋根に登った若者もいるという報道もあったが、ポケモン・プレーヤーが教会の敷地の中にずかずか入り込んでくることにうんざりしている牧師もいる。
ある牧師は、ポケモンGOの開発会社の1つである株式会社ポケモンに対し、教会の敷地がポケストップに使われないよう嘆願しようとしている。
ワシントン州レントンの地元ニュース局「KIR07」によると、ポケモンGOのプレーヤー数人が、市内にある東レントン・コミュニティー教会の児童遊具施設にたどり着いた。同教会のマーク・キルカップ牧師は同州ベルビューにあるポケモン・カンパニー・インターナショナル社のオフィスを訪ね、安全上の理由から同教会をゲームから切り離してくれるよう要望した。しかし、同社の法務部から連絡させるとして追い返されたという。キルカップ氏の元には、いまだ何の連絡もないという(7月13日時点)。
キルカップ氏は、「見知らぬ人が教会の児童遊具施設の近くにいるのが心配なのです。子どもの安全が第一ですから。ポケモン側もこうした問題が起こることを予測すべきだったのです。責任あるゲーム会社であれば、当然、このような論争を解決していくチームを持つべきです」と語った。
テキサス州のある牧師も、教会の敷地をポケストップとし使用しているポケモンGOに対して異議を唱える。
信仰に結び付くのか疑問
「私たちは、必要としてくれる方々がいるときにここにいます。ここは私有地なのですから、ここにいる必要のない人たちには来てほしくありません。何か事故が起こった場合に責任は取れませんし、正直なところ、他の理由で教会に入って来る人たちが、その人たちの信仰の覚醒に結び付いていくのかどうか疑わしいと思います」と、テキサス州キリーンにある幕屋バプテスト教会のロバート・スパーベック牧師は地元のNBC関係者に語った。
教会にも「捕まえる」機会
ノースカロライナ州シャーロットのキリスト・ルーテル教会の関係者は、特に介護サービスが行われているときに教会の敷地内に入ってきて歩き回る人たちには閉口すると言うが、ポケモンGOのおかげでポケモンを捕まえようとやってくる人たちを、教会が「捕まえる」機会が与えられていると語る。
「私たちは常にいろいろは方法を探しながら人々を捕らえています。もしポケモンを捕まえる機会を利用して人々を捕らえるとしても、どのような方法でそれをするのかを考えていかなければなりません」と、同教会の広報責任者ローリー・カーター氏は、FOX46に語った。
クリスチャンはポケモンGOをすべきでない?
クリスチャンはポケモンGOをしてもいいか、すべきでないかという質問について、大学生伝道の著書があるボマー氏はクリスチャンポストに対し、その質問は、クリスチャンが「スター・ウォーズ」やディズニー映画を見ていいか、「マインクラフト」のようなテレビゲームをしていいか、という質問と同じだと述べている。
「『スター・ウォーズ』を見るのであれば、悩まない方がいいのです。見ないのであれば、『あなたは娘がディズニーの映画の何を見ても許すのか?』と自問してみましょう。どの映画にも善や悪や、あらゆる権力が描かれているのですから」とボマー氏は言う。
牧師、ブロガー、そして『Jesus Swagger: Break Free from Poser Christianity(ジーザス・スワガー:気取ったキリスト教からの脱却)』の著者であるジャリッド・ウィルソン氏はクリスチャンポストに、クリスチャンが避けるべきものとして、ポケモンGOのような「ささいな」ものをわざわざ探す必要はないと語っている。
「クリスチャンは、進んでやるべきことよりも、してはいけないことを強調することが非常に多いように思われます。物事のより大きな枠組みの中にあって、本当にささいな問題に対して抵抗しようと躍起になっているのではないでしょうか。私たちは時々、サタンを買いかぶり過ぎることがあると思います。ささいな論議に長い時間を費やせば費やすほど、本当に大事なことに時間を集中できなくなってしまいます。殺人、堕胎、貧困、人種差別など、いくらでも大事なことはあります」とウィルソン氏は言う。
ウィルソン氏は最近、クリスチャンポストに論説記事「全てのクリスチャンが『ポケモンGO』から学ぶべき3つのこと」(英語)を執筆したが、その中で「ポケモンGO」は「単なるテレビゲーム」であって、イエスは私たちに「文化を用いること」を求めていると強調している。
「私の言うことが本当かどうか、かつて子どものころポケモンにはまった何十万人といる若い牧師たちに尋ねてみるといいでしょう。イエスは私たちに文化を拒否せずにそれを用いることを求めている、と私は固く信じています。皆さんは、この世に属さないままで、文化の影響を受け入れられるのです。皆さんの生き方、社会、そして毎日の経験を豊かにするためです」