在任中に卒業式で「君が代」の伴奏を拒否したことに対する東京都人事委員会の減給処分は不当であり、憲法19条(思想・良心の自由)と20条(信教の自由)に違反するなどとして、クリスチャンの元小学校音楽教諭、岸田静枝(しずえ)さん(66)が国家賠償を求めて訴え、東京高裁が7月19日、減給処分の取り消しを命じた一審とほぼ同様の判決を下し、原告である岸田さんと被告である東京都人事委員会および同教育委員会の双方からの控訴を棄却した裁判で、都側は上告を断念し、これにより東京高裁判決が確定した。岸田さんが5日未明、本紙にメールで伝えた。「つまり、処分は取り消され、国家賠償請求は棄却されました」と、岸田さんは述べた。
7月19日に東京高裁判決が出たこの裁判の上告受付期限は、8月2日の24時。上告の提起と上告受理の申し立ては、判決正本を受け取った日の翌日から起算して2週間以内に、書面が裁判所に届くことが必要とされている。
「8月2日(火)、翌3日(水)、そして夜間受付だった場合を考えて念のため今日4日(木)の3回、弁護士さんが確認してくださいました」と、岸田さんは伝えた。
岸田さんは、「今回の東京高裁判決では、使える部分が幾つかあるので、大阪や、再任用や、現職の方々からも、さっそく連絡が入りました」と、関連する他の裁判について述べた。
「これまでの多くの多くの地道な闘いに支えられ、一つ一つ獲得したことが次につながってゆく実感を持ちました」と、岸田さんは振り返った。
「定年退職をしてから6年、最初の戒告処分から12年間の、私の訴訟終結の今日まで、怒りの気力に満ちたり、勇気百倍になったり、そんな時ばかりでなく、くじけたり、諦めたりした多くの時間も肯定し共有して、何よりも報道の力」で励まし続けてくれたと岸田さんは周囲の人たちについて語り、「本当にありがとうございました」と本紙に謝意を表した。
「今は、何と言ったらいいのか分からないけれど、ただただ『ありがとうございます』の感謝の気持ちでいっぱいです」と、岸田さんは結んだ。
7月19日の東京高裁判決で、同裁判所は、懲戒処分の裁量権の逸脱の有無・濫用について新しい判断を下していた。また、その直後に東京・霞ヶ関の司法記者クラブで行われた記者会見で、「最高裁に上告するつもりか」との本紙記者の質問に対し、岸田さんは「考え中」と答えていた。
原告弁護団の高橋拓也弁護士も「一審の時には、もし東京都側が控訴してこなければ、こちらが控訴しなくてもいいのではないかという判断があった。先に東京都側が控訴してきたので、こちらも控訴したという経緯があり、今回もそうするのか、あるいはやっぱり20条の部分が不服だということで最高裁を視野に入れるのか、それはこれから協議する」と語っていた。