80パーセントを超える失業率や汚職・食糧不足などで崩壊の危機に見舞われているアフリカ南部のジンバブエ共和国で、ロバート・ムガベ大統領(92、カトリック信徒)による強権的な長期政権に対する抗議運動をして国民の英雄となったエバン・マワリレ牧師(39)。首都ハラレにあるヒズ・ジェネレーション・チャーチの主任牧師の1人であるマワリエ氏は、同政権ににらまれて逮捕された後に釈放され、家族とともに隣の南アフリカ共和国にいる現在も、「私はジンバブエを見捨ててはいない」と話す。英国クリスチャントゥデイが26日に報じた。
同紙は5月23日、マワリレ氏がムガベ政権を倒す抗議運動を偶然始めることになった後、殺しの脅迫を受けたという記事を掲載。それによると、マワリレ氏は突然、自国の状況に非常に怒り、自分の演説をハラレにある自宅の机で録画した。首の周りにジンバブエの国旗をまとった彼のその動画は、ツイッターの#ThisFlag(#この国旗)というハッシュタグで全国的な流行を引き起こしたという。
7月13日、同紙は、ムガベ政権に反対する運動を主導したとしてマワリレ氏が逮捕され、市民の暴力をかき立てたとして告発されたと報じた。しかしその翌日、同紙は、マワリレ氏がムガベ氏に対する抗議を鼓舞するインターネット運動を通じて政府を倒そうとしたとする告発を、ジンバブエの裁判所が却下したため、同氏が拘留から解放され、ムガベ氏に対する抗議をさらに呼び掛けていると伝えた。
同紙はその後、16日付で、ジンバブエの経済危機を何とかするための大衆運動を始めてから、同氏がソーシャルメディアや地元の民衆から英雄視されていると伝えた。さらに、20日付の同紙は、ムガベ氏はマワリレ氏を非難したと報道。AP通信による情報として、同氏は現在南アフリカにいるが、逃げたという報道を否定したとも伝えた。
一方、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは22日、マワリレ氏が「脅かされている」として、その「安全を危惧している」と述べた。
世界教会協議会(WCC)は18日、「教会はジンバブエに正義のための力強い声をもたらす」という見出しの記事を掲載。その中で、2010年からスイスのジュネーブにあるルーテル世界連盟(LWF)でルーテル神学と実践研究幹事を務め、最近になってジンバブエ教会協議会の総幹事に任命されたケネス・ムタタ牧師が、「ジンバブエがエキュメニカル運動全体の支援を必要とするようになる、この最新段階—―1つの決定的な瞬間—―に私たちが入っていくに当たって、エキュメニカルな連帯がジンバブエにとって鍵となるだろう」と語ったことを伝えた。
その記事を書いたジュネーブに住むコミュニケーションの専門家ロバート・バートラム氏はその中で、「民衆の集合的な反応を元気づけたのは、エバン・マワリレ牧師がジンバブエの独立記念日にオンラインの動画を投稿したことだ。心からの叫びのうちに、マワリレ牧師はジンバブエでの暮らしがどのようにして耐え難いものになってしまったのか、全体のシステムがどのようにして崩壊してしまったのか、そして彼が自分の子どもたちにもはや希望を与えることができないということを、明確に述べたのである」と記した。
「これがジンバブエの庶民と共鳴し、そして彼は国民に対し働きに行くのを1日拒否するよう呼び掛けた。それが成功したことが分かると、彼は次の週も仕事をボイコットするよう人々に熱心に勧めた。この時点で、ジンバブエ政府が介入して彼を逮捕したのである」と、バートラム氏は続けた。
「しかし、今や彼の人気がものすごいものとなっていたため、ジンバブエの国民は彼を取り囲んで集会を開き、そして政府は7月13日に彼を牢屋から釈放せざるを得なくなった」と、バートラム氏は付け加えた。
「そのような扱いを通じて」とムタタ氏は語り、「政府は彼が英雄になりつつあり、不満を持つ市民たちにとっての結集点となりつつあったことに気が付いたのだろう」と付け加えた。
マワリレ氏は28日、ツイッターでこう記した。「大統領殿、あなたは自分の太陽が沈んでいくのを止めることはできないし、そして、あなたは私の(太陽)が昇っていくのを止めることなど到底できないだろう」
なお、マワリレ氏のフェイスブックはこちら。ツイッターはこちら。ヒズ・ジェネレーション・チャーチの公式サイトはこちら。フェイスブックはこちら。また、ユーチューブで「Evan Mawarire」と入力して検索すると、関連の動画を見ることができる。