トルコ宗務省は今年、イスラム教徒の断食月であるラマダンの間、同国のイスタンブールにある歴史的なキリスト教の旧聖堂でイスラム教のモスクだった博物館「ハギア・ソフィア」の中で、ムアッジン(イスラムの祈祷時報係)による祈りの呼び掛けとイスラムの聖典であるクルアーン(コーラン)の朗読を許可した。世界教会協議会(WCC)が13日、公式サイトで「ハギア・ソフィア:互恵的な尊重と宗教の政治」と題する英文記事で伝えた。
1985年からユネスコ世界遺産の場所となっている6世紀の教会、ハギア・ソフィア(ギリシャ語で「聖なる知恵」という意味)は、最も大きなキリスト教の大聖堂の1つで、紀元後537年からコンスタンディヌーポリ総主教座であった。1453年にオスマン・トルコ帝国に征服されてから、この建物はモスクに改宗され、1935年までそのような役割を果たしていた。トルコ共和国の創始者であるムスタファ・ケマル・アタテュルクは、この記念建造物を芸術的で歴史的な重要性を持つ共通の場所と見なした。彼はハギア・ソフィアを博物館に変えたのだった。
この地域からの報道によると、ムアッジンの祈りの呼び掛けに対する許可が7月1日に出たことで、この歴史的建造物の利用をめぐる論争が再燃した。ギリシャ政府による公式な複数の申し立てがなされ、これらはトルコ側からの対応によって応じられた。
東方正教会のコンスタンディヌーポリ(現在のイスタンブール)全地総主教であるバルソロメオス1世は今月の展開について、最近の説教の中で「私たちはイスラム教最大の祭りを尊重する。私たちは彼らの信仰を尊重するが、彼らが私たちの信仰や私たちの先祖たちの礼拝場所も尊重するよう求める」と述べた。
「ハギア・ソフィアのような記念建造物に対する」そのような尊重は互恵的であるべきだと同総主教は述べた。「ハギア・ソフィアは何世紀にもわたってキリスト教会の建造物だけでなく、私たち国民全体の歴史と自らの存在証明をも示してきた」
バルソロメオス1世は、「トルコのような国はこの遺産を尊重したたえるべきであり、この国に住んでいるその市民—私たちのような小さな少数者—を脅かすべきではない」と結んだ。トルコではイスラム教徒が国民の9割を超えている。
トルコの歴史学者であるイルバー・オルタイリ氏は、同国の日刊紙「ヒュッリエイト」に寄稿し、礼拝者ないし旅行者の群衆による人の呼吸でさえも、継続的な修復を必要とする古代の建造物に対する脅威となると述べている。同氏はハギア・ソフィアが博物館としての機能を保ち、市民に公開するのは限られた日数だけにするよう勧めている。
オルタイリ氏は、「文化遺産である記念建造物の保護は、単なる観光や一般展示にはそぐわない。人類の文化的冒険の長い旅に対する尊重が必要だ」と助言している。