2020年に創立150周年を迎えるフェリス女学院(横浜市)は、17年4月に同大のリベラル・アーツ教育の拠点となる「全学教養教育機構(CLA)」を開設することを発表した。今後はCLAを中心に、同大の伝統であるリベラル・アーツ教育を21世紀型の教養教育として展開し、「新しい時代を切り拓く女性」の育成を目指す。
同大のルーツは、1870年、米国改革派教会の女性宣教師メアリー・E・キダーが、横浜で女子を対象にした私塾を開校したときにまでさかのぼる。以来、同大の教育は、世界的な視野に立った知性と教養の修得、献身と奉仕の実践、芸術的・文化的要素の養成、新たな時代を切り拓くことのできる女性の育成を大切な使命としてきた。
CLAのカリキュラムも同大の伝統を受け継ぎ、キリスト教的価値観に関する正確な理解をもとに、「自分たちが生きる世界」「ボランティア精神が持つ力」「女性のキャリア」「新しい文化創造の可能性」「音楽の力」「女子教育の歴史とその意味」について広く考え、理解を深める機会を提供するものとなっている。
全学部の学生を対象としたCLAは、旧来型の1~2年生対象の一般教養科目と異なり、4年間を通じた体系的なカリキュラムで編成され、▽キリスト教科目、▽語学科目、▽知のフロンティア科目、▽実践教養科目、▽フェリス教養講義科目:For Others、▽健康・スポーツ科目、▽留学生科目の7科目群と、FERRIS+(フェリスプラス):実践教養探求課程の1課程で構成されている。
例えば、語学の科目では、10言語を各自の希望やニーズに応じて多様なコースから選択して学べるほか、実践教養科目では、判断・行動するうえで必要とされる手段・議論の進め方・合意形成の方法を実践的に学んでいく。
またFERRIS+では、課題解決の授業(Project-Based Learning)を効果的に取り入れ、大学での学びと社会との接点を意識しつつ、現代社会で求められる教養について主体的・体験的に学ぶ。
寄せ集めの一般的な知識ではなく、新しい時代に主体的な役割を果たすために必要な知識と語学運用能力、課題発見・課題解決の方法を、学部・学科の専門教育と並行して修得していくことができる。
なお、CLAを推進する拠点として、専用の校舎「CLA棟(全学教養教育棟)」も整備中だ。この中では、アクティブラーニング対応教室も充実させ、新しい教育に対応した最新設備が備えられる。
さらに、CLA棟内には、同大の国際化のシンボルともなる「国際センター(International Center)」を開設し、留学を志す学生と受入留学生の支援を担う機能を充実させていく予定だ。
CLA全学教養教育機構長でキャリア教育・全学教育担当副学長の谷知子氏は、CLA開設に当たり「明治の時代に、キリスト教精神に基づいた、日本最初の近代女子教育機関を横浜に創設したメアリー・E・キダーの志を受け継ぎ、本学のモットーである『For Others』を実現できるような、フェリスらしいリーダーシップを身に付けることができます」と述べている。