皆さんにも忘れられない教師との出会いがおありだと思いますが、私の生涯においても何人かの素晴らしい教師との出会いが与えられました。その1人が安齋伸先生です。
安齋先生は上智大学の宗教社会学者として内外ともにその名をとどろかせた方です。この先生のもとで一時期宗教社会学の研究をさせていただいたことがあります。安齋先生はカトリックの熱心な信徒でありますが、キリスト教以外の諸宗教との対話を熱心に進められ、世界の平和に少なからず貢献された方です。
先生は出会う全ての人を温かく親愛の情でもって接し、深い同情と共感をもって受け入れてくださいました。最初に出会ったときから、先生の卓越した人格に魅了させられました。
相手がどんなに社会的に高い地位にあろうが、どんなに低いところにあろうが、神によって命を与えられた大切な人格として接しておられたように思います。写真にあるように有名なローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の友人であると同時に、私ども研究生に対しても真心をもって接してくださいました。そして、いつでも自分にできることなら喜んで、という姿勢で人と接しておられました。
先生に関してはエピソードが尽きることがありませんが、先生の教育者としての大きな転換期は、全国を吹き荒れた学園紛争の時代でありました。
60年代の後半です。教育が荒廃していった反省として、先生は学生たちにいつでも心を開いておくことを決心したのだそうです。研究室のドアはいつでも開けておき、学生が自由に入って来られるようにし、入ってきたときは笑顔で歓迎し、学生と心を開いて自由に話し合う雰囲気を作っていったのでした。
その努力が実を結び、先生が学部長をされていた社会学部はいつも和気あいあいとして、笑いが絶えない空間となっていました。教師と学生の壁を取り去り、人間を分け隔てるあらゆる壁を取り去って、一人一人を生かしていく教育を目の当たりにしました。深い信仰から滲み出した類まれなご人格でありました。
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