1980年代末期から90年代中期にかけて、あの忌まわしい事件の数々を起こしたオウム真理教。日本の犯罪史上最も凶悪な事件でありました。当時、事件の行方を毎日のようにニュースが流し、緊迫した状況が続き、日本中を震撼(しんかん)させました。
これが宗教の名の下に活動している組織であったことが、他の宗教教団に対する評価をも著しく低下させました。いまだに謎が多く残っています。素朴な疑問はその信者の中に多くの優秀な大学卒の人がいたということや、外国の科学者や宗教学者までもがその理解者であったという点であります。
さらには、あれだけの凶悪事件を引き起こした首謀者である麻原彰晃(本名松本智津夫)がいまだに宗教的指導者として崇められており、その信奉者がAleph(2000年にアレフ、03年にアーレフ、08年にAlephと改称)という教団などに数千人もいると言われていることです。不思議でなりません。
マインドコントロールというものの恐ろしさをこの事件を通して見せつけられています。思考停止状態になり、リーダーに対して決して反論できない心の状態になるらしいのです。
しかし、オリンパスの巨額損失隠しや大王製紙の前会長の巨額資金不正流用など、日本の大きな事件を見ていますと、組織のトップに対しては何も言えない雰囲気が社内にあって、誰も批判の声を上げることなどタブー視されているという証言が聞こえます。
これもマインドコントロールでしょうか。それとも、日本人の集団の一つの特徴でしょうか。トップに対しては異を唱えることができない雰囲気がいつの間にか出来上がってしまうという特質があるのでしょうか。
オリンパスの事件の場合、外国人の前会長が内部告発をして明らかになったということですから、これは日本人の作る集団の負の特質なのかもしれません。
上司が部下からの批判を恐れず、むしろ批判を探し出すくらいの心の広さと、言いたい本音が言えるような空気を作り出す度量を必要としているのかもしれません。声を上げたら首を切られるから黙って耐えていこうと、組織の中で怖れながら働くのではなく、人格が成長するために働けるような組織が日本にもっと必要ではないでしょうか。
◇