私どもの教会に県外から来客があるときは大抵、五台山にある牧野植物園にご案内することにしています。まず五台山から高知市が一望できることと、植物園自体が見ごたえのある空間であるからです。温室には、フィリピンにいたときにそこら中に見られた熱帯植物が多くあることも、その理由かもしれません。
植物園には牧野富太郎博士(1862~1957年)についての立派な展示室があります。今まであまり詳しく見たことはありませんでしたが、先日、少し説明文も詳しく読んでみました。
牧野富太郎博士は1862(文久2)年に高岡郡佐川町に生まれています。日本の植物学の父と言われ、多数の新種を発見し命名も行った近代植物分類学の権威であります。
彼の膨大な研究成果は『牧野日本植物図鑑』に代表される著作として残っています。ある展示の中で牧野博士が「神を信じてはいけない。事物を深く観察しその本質を研究しないで安易に摂理として片付けてしまうから」という内容のことを書いていました。
これは私たち信仰者への警告だと受け止めました。確かに信仰者はすぐに神の摂理ということを持ち出す傾向があります。そして、それ以上深く物事を考えたり、探求したりすることを止めてしまう癖があるのかもしれません。
神の名のもとに自分に甘えることを許しているかもしれません。そのことは十分自戒しなければいけないなと思わされました。
しかし、「神を信じてはいけない」と断言することは誤解を招きかねません。神を信じるがゆえに生きる希望を見いだして、自分に与えられている賜物に目覚め、人々のために一生をささげて最大限の努力をしている人々も数限りなくいますから。
マザー・テレサもその一人です。また、神を信じる優秀な科学者も文学者も無数にいます。牧野富太郎という高知県の生んだ類いまれな偉人の言葉ですから、私はこれを信仰者への警告として受け止めていたいと思います。
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