過日、高知市市民映画会で上映された「アメイジング・グレイス」を観賞することができました。これはてっきりあの有名な賛美歌「アメイジング・グレイス」を作詞したジョン・ニュートンという人の生涯を描いた作品かと思っておりましたが、あにはからんや、ウィリアム・ウィルバーフォースというイギリスの国会議員で奴隷廃止のためにその半生をささげた偉人の紹介でありました。
あの賛美歌とこのウィルバーフォースという人物との接点は何だろうと思い、少し調べたところ、ウィルバーフォースはその人生の重要な選択の時期にジョン・ニュートンに助言を求めて訪ねて行っているのです。
ジョン・ニュートンは、かつては奴隷船の船長をしていて、航海中に大嵐に遭い、船が沈むかもしれない危機的な状況の中で聖書の御言葉と出会い、その場で回心した人です。そして、人身売買という恐るべき仕事から足を洗い、後に牧師となり、ロンドンで英国国教会の牧師として残る生涯を全うした人です。
そのジョン・ニュートンが自分の過去を思いつつ、キリストの救いの恵みを歌にしたものが、あのアメイジング・グレイスであります。
ウィルバーフォースがジョン・ニュートン牧師に助言を求めたのは、彼の生涯の仕事として政治の世界で働くべきか、それとも神の道を求めて聖職者になるべきなのか、という人生の分岐点に立っていたからでした。
ウィルバーフォースは26歳の時にキリストの救いを体験し、回心しました。それまでの彼は本来優秀な頭を持っていましたが、本気で自分をささげる目的を持たず、学生気分が抜けず遊びにふけっていたようです。
しかし、この回心をきっかけに、彼の人生が大きく変わっていきました。神に目覚めると、人は自分の命と使命に目覚め、与えられている時間と人生をどのように生きたらよいのか真剣に考えるようになるのですね。ジョン・ニュートンは彼に、神に対する信仰を通してこの矛盾と悪に満ちた世界を変えよ、と励まされ、彼は政治の世界にとどまりつつキリスト信仰に立って、20年という歳月をかけてついに、300年も続いていた奴隷制度を廃止する法案を実現させたのでした。
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