「自由と民主主義のための学生緊急行動」(SEALDs)創立メンバーの奥田愛基(あき)氏は5日、国会正門前などで行われた「明日を決めるのは私たち―6・5全国総がかり大行動」で演説を行った。奥田氏はその中で、安倍晋三首相に対し、「もうちょっとまともな政治をしてくれないか」などと批判。またメディアに対しては、参議院選挙の真の争点はアベノミクスではなく憲法であると強く指摘した。
そして奥田氏は、俳優だった故菅原文太氏の言葉を引用し、「どんな絶望的な状況であっても、まだ俺には弾が残ってる!」と強く語るとともに、安倍氏に対し「安倍さん、まだ弾は残っとるがよ!!」と力を込めて演説を結び、拍手喝采を浴びた。
奥田氏の演説全文は以下の通り。
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ご紹介にあずかりましたSEALDsの奥田愛基です。よろしくお願いします。
暑いっすね。1年前の6月5日に初めて国会前に立って、その時、雨が降ってて、500人ぐらいしか集まらなくて、1年たってもまだここに立ってるのかという感じがしますけど、でも今日も声を上げていきたいと思います。
安倍晋三さん、あなたは「経済で、結果を出す」と言って11月にポスターを全国で張ってますよね。今がリーマンショック並みの危機が起こってるとするならば、もう経済に結果が出たんじゃないですか。
うちの友達が言ってました。確かに安保法制や改憲の議論では、安倍首相の言っていることは間違ってるかもしれないけど、経済計画では自民党が有利だと。でも、もう経済でも結果が出てて、良くないっていうデータが出てんだったら、もういいところは何もないんじゃないですかね。
麻生さんも谷垣さんも、消費税を上げられなかったら、2014年の時にわざわざ解散しといて、もう一回解散するしかないって言うのも全く聞かないで、延期しましたよね。自民党の中でもこれ良くないって思ってる人たくさんいるんじゃないですか。
もうちょっとまともな政治をしてくれないですかね。TPPの合意の文書も全部黒塗り。そんなんで国会の運営ができるわけないでしょ。安保法制の議論の時も100回ぐらい審議が止まって、それで通しちゃったわけですよね。それが正常な国会運営と言えるんですか。
昔、ハマコー(浜田幸一)さんっていう人が「自民党は誰のものだ?」って言ってましたけど、本当に未来の子どもたちに顔向けできるんですか。
委員会を通ったときの議事録が残ってなくて、後々変えましたよね。そんな例は一度もないって言ってましたよ。そんな議事録を後で変えていいんだったら、もう国会の運営は必要ないじゃないですか。もう国会が始まった瞬間に、与党議員でかまくら作って、立ったり座ったりしたら法律できちゃうじゃないですか。いま何時代ですか。“かまくら”時代ですか、これは。平成というか現代に戻してほしいと僕は思っています。
あともう一つ、メディアの人たちに言いたいのは、これたぶんアベノミクスの是非といって争点作ると思うんですけど、これ実際、2014年の選挙の時にアベノミクスが争点だと言ってやったことは何ですか。安保法制だったでしょ。これ、安倍さんは絶対、3分の2を取って改憲したいと思ってますよ。
であるならば、今回の選挙で一番この日本の政治が変わろうとしているのは憲法ですよ。これを強く僕は言いたい。何かもう振り回されて、あっちやこっちややって分断するのはやめてほしい。生活困ってますよ。アベノミクスでいいと思ってる人なんてほとんどいないですよ。
だけど、本当のことを言わないで選挙をやるのもおかしくないですか。ちゃんとこういうことをもっと報じてほしい。3分の2を取ったら何をしようとしているのかっていうことを、ちゃんと報じてほしい。自民党改憲草案って何なのかっていうのをちゃんと報じてほしい。
で、毎回怒ってるんですけど、こういうことを毎回やってると疲れてきますよね。相も変わらず同じことを言わせるなって毎回思ってるわけです。
国民の政治離れなんていっていますけど、政治の国民離れでしょう、これ。なめないでほしい。
僕がちょっと諦めそうになったときに毎回思い出す言葉があって、菅原文太さんの言葉なんですけど、「弾(たま)はまだ残っとるがよ」って言ってたんですよね。知らない人は「仁義なき戦い」を見てください。ラストの撃ちのシーンです。
でも、これは若い人に向けて、『フライデー※』で「弾は(まだ)残っとるがよ」の「弾」の意味を答えてるんですね。菅原文太さんが言うには、弾っていうのは、今まで出会った人との出会いとか、今まで学んできたこととか、誰かから愛されたこととか、そういうものが自分の中で弾として残ってる。どんな絶望的な状況であっても、まだ俺には弾が残ってる!!
皆さん、今日も菅原文太さんに倣って――参議院選挙の結果はいろんな世論調査が出てあんまりよくないです、ぶっちゃけ。一人区でもそんなに勝てるかどうかぶっちゃけ分かんない――けど言いたい。安倍さん、まだ弾は残っとるがよ!!
ひっくり返しましょう。ひっくり返していきましょう!!
※注:奥田氏は『フライデー』と語ったが、実際は『週刊プレイボーイ』誌(集英社刊)の2013年第39号と思われる。『フライデー』誌(講談社刊)は2014年12月17日のデジタル版で「追悼・菅原文太 仁義あふれる81年 最後の命を燃やした脱原発基地問題」という記事を掲載し、その中で「弾はまだ残っとるがよ」というセリフを引用しているが、若い人向けにその意味を答えてはいない。