日本基督教団は6日、「福島第一原子力発電所事故後五年に際しての議長声明」を公式サイトで発表した。
石橋秀雄総会議長の名前によるこの声明は、初めに旧約聖書の創世記1章31節「神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった」を引用し、「今この時も、被災地にあって困難な日々を送っておられる方たち、また、放射能汚染から逃れて故郷から移住し、不安な日々を過ごしておられる方たちに、神のお支えとお守りを心よりお祈りいたします」と記している。
声明は、同教団が2012年3月の「福島第一原子力発電所事故に関する議長声明」で「原子力発電というものが・・・神の創造の秩序を破壊し、命あるものの関係を断ち切る人類滅亡の危機の始まりとなりうること」を指摘したことを想起している。
また、翌年3月に同教団が「福島第一原子力発電所事故三年目に際しての議長声明」で「あらためて原子力発電所の稼動停止と廃炉に向かっての処置がなされるように求める」ことを表明したことにも触れている。
声明は、昨年8月に川内原子力発電所1号機を再稼働した際、政府が、原子力規制委員会による審査は「世界で最も厳しいレベルの規制基準」によってなされたと述べたことに触れ、「『世界で最も厳しい』ということには何の根拠もありません」と批判している。
田中俊一原子力規制委員長が「川内原発は新規制基準に適合したもので、安全と認めたわけではない」と発言したことについては、「まさにその通り」と述べ、「基準に適合したからといって、原子力発電所の稼働が安全であるということでは全くありません。さらに、事故が起きた場合の防災対策もきわめて不十分なままです」と指摘した。
声明は、「世論調査においても、全国で半数を超える人たちが原発の再稼働に反対している中で、これらの国民の声を無視して原子力発電所の再稼働を進めていることに強く抗議します」と明言。「それと共に、政府に対して、原子力発電所の稼働を停止し、すみやかに廃炉に向けての処置を取ることを求めます」と要求している。
さらに、冒頭で引用した創世記の箇所に触れ、「東日本大震災から五年目を迎えるにあたり、私たちは、神さまがお造りになり、聖書が『見よ、それは極めて良かった』と述べている世界の回復を心から願い、祈ります」と述べ、「そして、国内外の諸教会との連携・協力において、それぞれの場で原子力に依存しないエネルギー政策への転換の取り組みを求める働きかけを継続してまいります」と結んでいる。