星の教会(聖ネポムツキー巡礼聖堂 )sv. Jana Nepomuckeho at Zelena Hora
2015年11月8日(日)訪問 場所 ゼレナー・ホラ Zelena Hora
建築家 ヤン・ブラジェイ・サンティーニ
建設 18世紀初め 1994年ユネスコの世界遺産に登録
ゼレナー・ホラは、ボヘミアを代表する巡礼地。なだらかな緑の草原を走り、日も傾きかけた午後3時半すぎ、丘の上に建つ聖堂に着いた。一目見て、変わった、ユニークな教会だと思った。星型の五角形の建物を五つの小礼拝堂が囲み、回廊でつながっている。聖堂を取り巻くように、放射状に墓石が建ち、赤や黄色の花が静かに咲いている。
チェコの聖人ネポムツキーは、懺悔(ざんげ)守秘の殉教者として崇拝されている。伝説によると、王妃が彼に懺悔した内容を、王が知りたいと思い問い詰めたが、いかなる拷問にも耐えて口を割らなかった。ネポムツキーは袋詰めにされ、プラハのカレル橋からヴルタヴァ川に投げ込まれてしまった。彼の魂が天に昇ると五つの星が現れ、遺体の場所を示したという。後に彼の墓を開けてみると、遺体は白骨化していたが、舌だけは原型をとどめていた。
この伝説から、五つの星や聖ネポムツキーの舌を象徴するモチーフが、天井、入り口、窓などに使われている。
ヤン・ブラジェイ・サンティーニの設計は、斬新だ。ユニークな三次元の造りは、フランク・O・ゲーリーらの現代建築にも通じるものがある。
墓地
聖堂の脇道を少し下ると、周囲は広大な墓地が整然と区画されている。夕暮れのさびしい時となり、人影はほとんどないが、墓参りの人が、そっと花を手向け、何か語り掛け、ハンカチを握りしめ、涙ぐんでいるかのような姿。空は青色に澄み渡り、日はまさに沈まんとして寒さが迫ってくる。
ゼレナー・ホラ(緑の山の意味)の教会は、チェコ中央部ズジャール・ナト・サーザヴォワ(Zudar nad Sazavou)の町にある。
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西村晴道(にしむら・はるみち)
1948年、靜岡県生まれ。一級建築士。法政大学工学部建築学科卒。住友建設株式会社入社・退職し、アメリカ合衆国ソービック建築設計事務所短期留学を経て、1984年、西村建築設計事務所開設。現在に至る。ルーテル学院大学第10回リード賞(キリスト教芸術分野)受賞。日本福音ルーテル静岡教会会員。著書に『FINE ROAD―世界のモダンな教会堂をたずねて』(イーグレープ)。
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