ユーチューブで「聖夜靜歌」と入力して検索し、再生すると聴こえてくるこの歌は、中国語によるクリスマスの賛美歌だ。「中国人のクリスチャンの間でとても人気がある」という。
そう語ったのは、台南神学院の国際的な教会音楽家で牧師でもある台湾の駱維道(ロウ・イトウ)博士。それはもう9年も前のことだが、同博士が来日し、神戸と東京でアジアと賛美歌についての講演を行い、賛美歌フェスティバルでこの賛美歌などの合奏を指導したときのことだ。ユーチューブには、同博士が2009年にこの賛美歌の合唱を指導している様子の動画も残されている。
この賛美歌の中国語の元の歌詞は、香港にある浸信會出版社というバプテストの出版社がウェブ上に掲載している。
一方、台湾長老教会は公式サイトで、この元の歌詞を少し変えて掲載している。
この賛美歌の歌詞の英訳は、「Holy Night, Blessed Night」として、アジアキリスト教協議会(CCA)賛美歌集『Sound the Bamboo: CCA Hymnal 2000』(GIA Publications、米国イリノイ州シカゴ)に掲載されている。ユーチューブには、マレーシアにあるマラッカ・ウェスレー・メソジスト教会のクリスマス・イブ礼拝で少女がこの英語版をとても高く澄んだ声で歌っている動画もある。
この賛美歌の日本語訳は、日本賛美歌学会編『竹を鳴らせ : アジア・キリスト教協議会 : 賛美歌2000』(日本賛美歌学会、2006年9月[頒布終了、国立国会図書館や四国学院大学図書館に所蔵])に11番「聖なる夜」として収録されているが、中国語の歌詞は、漢字で何となく意味が分かると思う方も多いだろう。いずれにせよ、この歌では、イエスが降誕した聖なる静かな夜の情景の中で主を賛美する歌詞が、中国の五音階にのせて美しく歌い上げられている。
ユーチューブにあるこの賛美歌は、ピアノやフルート、チェロなどの伴奏が多いが、せっかくなので中国の楽器を使ってみたらと思い、筆者は数年前に二胡の奏者にこの賛美歌のメロディーを演奏してもらった。しかし、音域がわずかに合わないところがあって弾けないと言われてしまった。
ともあれ、オーストリア生まれのクリスマス賛美歌の定番である「きよしこの夜」だけでなく、アジアの文化に根ざして主の降誕を祝い、神を賛美しようとするとき、この賛美歌は、日本の教会に何を教えてくれるのだろうか? 「聖夜靜歌」の静けさの中で祈りつつ、思いにふけるのもよいかもしれない。