未曾有の災害となった東日本大震災。その爪痕は、今もなお、東日本を中心に全国に残り、多くの人々がそれに苦しんでいる。福島県郡山市にあるNPO法人「FUKUSHIMAいのちの水」では、震災以来、放射能汚染に苦しむ郡山市の子どもたちに安全な水を飲ませようと、現在までに約400万本の水を無償で配布してきた。同団体の事務所「サンタハウス」を訪れた。
同団体の代表理事で、世界宣教センターの坪井永人牧師は先月、米国シカゴで福島県の状況を報告するために渡米した。その際、あるクリスチャンのシリア人夫婦に話し掛けられたことから、坪井牧師の新たな挑戦が始まった。
シリア人夫婦は、「どうか、シリア難民の子どもたちを助けてほしい。寒さのあまり、子どもたちが凍えて死んでしまう。日本から防寒着を集めて送ってくれないか」と懇願した。
「私たちは、目の前にいる郡山の子どもたちを助けることが最優先だと考えています。しかし、国家が国民を守る力を失うと、難民が生まれます。戦火から逃れてきた彼らが難民なら、福島の子どもたちは、『放射能難民』と言えるでしょう。福島の母親が子どもの身を案ずるように、シリアの母親もまた子どもたちの身を案じているのです。この母の愛の重さは、日本もシリアも変わらないと思うのです」と坪井牧師。
帰国後、急ピッチでシリア難民への支援活動が始まった。この冬を越すことが困難な子どもたちのために、活動は急を要する。衣服などの支援と同時に、缶詰などの食料、毛布、寝袋、テントなどの物資を集めることになった。活動は、米国のNPO、そして現地シリアのNPOとの共同プロジェクトになった。こうした日常生活品の他、坪井牧師は、現在、撤去予定となっている東日本大震災時に使用した「仮設住居」をシリアに送ることを考え、現在、日本政府とシリア政府に折衝中とのこと。「阪神淡路大震災の時に、約1万2000戸の住宅を海外の被災地に送った実績があることを考えれば、同じような動きが今回も取れるのでは」と坪井牧師は前向きな考えを示している。
「『とにかく、1日も早く衣服を送ってほしい』と現地から連絡が入っている。コンテナがいっぱいになり次第、まずは第一弾として送りたいと考えている。送った後も、第二弾、第三弾を考えているが、現地の状況などによって、どこまでやるか、いつまでやるかなど詳しいことはまだ決まっていない」と話す。現在、「サンタハウス」には、全国から続々と物資が寄せられている。段ボールの中には、小さな手紙が添えてあるものも。当初、段ボールをそのまま、コンテナに積んで輸送することを考えていたが、こうした小さな手紙や子どもが書いたと思われる絵などが入っていると、そうした「心遣い」は大切にしたいと、全て開封して、手紙などは別に保管して送ることにしたという。
「シリア難民の子どもが海岸に打ち上げられる衝撃的な写真がインターネットなどを中心に話題になりました。そうした影響もあるのか、今回のプロジェクトは、活動開始と同時に、SNSを中心にものすごい反響がありました。普段、私たちが取り組んでいる福島の子どもたちのプロジェクトのおよそ何十倍、何百倍のスピードでこの活動を知る人が多くなり、支援の声が上がるようになりました。良かった・・・と思うと同時に、『ちょっと悔しい』と思うのも本音です。シリア難民はどうしてこんなに注目されるのに、『放射能難民』となった福島の子どもたちには関心が集まらないのかと、人間の私の目には映ってしまうのです。しかし、神様の計画は偉大です。もしかしたら、このシリア支援を先に知っていただいた方々が、福島の子どもたちの支援にも関心を持ってくださるかもしれません。目の前の子どもたちを助けるためには、世界と手を組まなければならないのですね。これ以上、福島の子どもたちもシリアの子どもたちも、苦しめるわけにはいかないのです」と坪井牧師は話す。
「あなたがたもこのように働いて弱い者を助けるように、また、主イエス御自身が『受けるよりは与える方が幸いである』と言われた言葉を思い出すようにと、わたしはいつも身をもって示してきました」(使徒20:35)
坪井牧師は、この御言葉を示し、「『ボランティア』とか『善意』という言葉では片付けられない。神様の大きな計画の中に私たちは生かされている」と話した。最後に、先日、パリで起きたテロについても以下のようなコメントを寄せた。
「フランスのテロから、世界にイスラムへの報復を是認する風潮が流れています。それをやめさせなければなりません。IS(イスラム国)のしていることは『犯罪』、有志連合のやっていることは『裁判なしの死刑』のようなこと。どちらも止めなければなりません。どこかで暴力の連鎖を止めなければならないのです。支援はそのための戦いです。イスラムを愛し、ISを愛する戦いをしなければなりません。ミサイルではなく、支援物資を。それが、私たちクリスチャンの戦いですから」
緊急支援内容
特に、今年の冬を越すための防寒類と乳幼児の衣類などが必要です。
① 衣類、下着
季節、大小、古新、男女用、問いません。絵柄、色、センス善悪も不問、洗濯有無、破れ有無も不問、あなたの子どもに着せられる範囲で判別を。宗教、思想上の忌諱(きい)対象品の選別は現地NPOに委ねます。
② 紙おむつ、ミルク、ミルクビン、乳幼児用品
③ ホカロンなど携帯カイロ、携帯暖房用品、マスク
④ 毛布、タオルケット、タオルなど
⑤ 日用雑貨、テッシュペーパー、ペーパータオル
⑥ 懐中電灯、電池、携帯照明器具
⑦ キャンプ用品、テント、寝袋、携帯食器類
⑧ その他、あなたが遭難した時に必要と思われるもの※お送りいただいたもので、安全、法律上送ることのできないものは、当方で処分いたしますので、ご容赦ください。
送り先
〒963-0213 福島県郡山市逢瀬町多田野宮南2 サンタハウス
お近くの方は、直接お持ちください。サンタハウス入り口左隣に「シリア難民支援物資投入口」を設置いたしましたので、お入れください。午前8:30~午後7:00(常時オープン)。連絡先
FUKUSHIMAいのちの水代表・坪井永人(電話:090・7079・5011)輸送概要
当方は集荷、大分別、梱包、コンテナ詰め、輸出業務までを担当。輸入費用負担、仕分け、配布はアメリカ在住のシリアNPOが担当。その他は、走りながら考えております。