イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)によって誘拐され、最近解放されたシリアの司祭、ジャック・モウラド神父が、他のキリスト教徒約250人と共に地下室に入れられ、イスラム教に改宗するよう毎日圧力をかけられたことを明かした。
バチカンの通信社「アジェンジア・フィーデス」によると、マルエリアン修道院の院長を務めていたモウラド神父は、「多くの場合、キリスト教徒たちは自分の信仰についてと、キリスト教の教義について質問を受けました。大きな圧力があったにもかかわらず、彼らはイスラム教に改宗しませんでした。皆、ロザリオの暗唱に忠実でした。この試練の経験は、司祭としての私の信仰を深め、皆の信仰を強くしました。まるでもう一度生まれ変わったかのようです」と自身の経験を明かした。
モウラド神父の言うキリスト教徒約250人とは、シリア中部の街カルヤタインで捕らえられた約250人のグループだと考えられている。
イラクやシリアの多数の都市を占領しているISは、キリスト教徒を大規模なグループで人質として捕らえ、生き残っている人たちに契約を結ぶことを強制し、過酷な条件の下で生活させたり、殺害したりしている。
モウラド神父は、5月21日にカルヤタイン郊外にある修道院で、同僚と共にISに拉致され、10月11日に無事解放された。
イタリアの通信社ANSAは、モウラド神父について知る複数の情報筋が、モウラド神父が10月初めに解放されたことは認めたが、解放に関するあらゆる詳細については何も触れなかったと伝えた。
モウラド神父は、拘束された状態にあっても、希望を持ち続けていたと語った。「手が後ろで縛られ拘束されていた中、私は意外にも『私は自由に向かっているのだ』と、心の中で何度も何度も繰り返し唱えていました」
8月にカルヤタインを占領したISは、キリスト教徒たちに、街に住み続けるためには人頭税を払うこと、また自分の家に留まるのであれば、さらに多くの要求に同意することを強要した。
ISは、他にも多くのキリスト教徒たちを拘束している。2月には、ハブール川渓谷にある村を襲撃し、少なくとも180人のアッシリア人キリスト教徒を拉致し、いまだに拘束している。
10月には、ISがこの180人のアッシリア人キリスト教徒を処刑する計画だということが明らかになった。これは、交渉担当者が解放に関してIS側の高額な身代金の要求を満たすことに失敗した後のことだった。
アッシリア人権ネットワーク(AHRN)ディレクターのオサマ・エドワード氏によると、シリアの東方教会のエフレム・オトナイアル主教により人質交渉が行われたが、IS側の無理な要求のために交渉は中断せざるを得なくなった。IS側は1200万ドル(約14億4千万円)の身代金を要求してきたという。「ISは、身代金を払わない場合は180人の人質を処刑すると脅しました」とエドワード氏。捕らえられたアッシリア人キリスト教徒たちの安否は現在のところ不明のままだ。