5月にイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)によって誘拐されたシリアの司祭、ジャック・モウラド氏が10日、無事解放された。解放された翌日には、ホムス県で解放後初めてミサを執り行った。
AFP通信が教会関係者の話として伝えたところによれば、マルエリアン修道院の院長を務めていたモウラド氏は解放され、ホムス県ホムス市から3マイル離れた所に保護されている。
8月、武装グループがカルヤタインの町を占領し、60人のキリスト教徒を含む230人以上を拉致した際、築1600年の同修道院がISによって破壊された。モウラド氏は、その数カ月前の5月下旬、ISの武装グループが古都パルミラを征服した際に拉致された。
「モウラド神父は自由の身となりました」「現在彼はザイダルの村にいます」と関係者は明かした。また、モウラド氏と日曜日のミサを共にささげることができたという。
駐ダマスカス・バチカン大使のマリオ・ゼナリ氏は、モウラド氏が良好な健康状態にあると伝えている。
「10日にジャック・モウラド神父は解放され、12日の午後2時ごろ、私は彼の解放後初めて、彼と会話を交わしました」とゼナリ氏。「彼は休んでいること、また良い健康状態にあることを私に話しました」
ゼナリ氏は、拉致の詳しい内容や、世界で最も残虐な過激派組織の一つであるISの監視下に約5カ月間置かれたことについて、モウラド氏が近々シリアの首都ダマスカスへ行って話してくれるだろうと語った。
「私は電話で少し話をしましたが、拉致の詳細については話しませんでした」とゼナリ氏。「今言えることは、彼はリラックスしており、健康上の問題はないということです」
ISによる拉致以来、モウラド氏についての情報や連絡は全く無かったが、9月下旬に公表された、何人かの男がISの戦闘員とミーティングをしているビデオの中に、同氏が映っているのが発見された。
「イスラム教のルールに従属を誓約するジズヤを支払うまで戦う」と題されたビデオで同氏は、その地域に住み続けるための「支払契約書」に署名をしなければならなかった。この契約では、ISがキリスト教徒に対して、傷つけたり、イスラム教に改宗することを強いたり、持ち物を奪ったりすることができない。一方、キリスト教徒は、ISに対して陰謀を企てたり、十字架を建てたり、教会の鐘を鳴らしたりしない、また公共の場所で集会などを行わないことを誓約させられる。さらに、半年ごとの人頭税の支払いを約束する。契約を遵守しない者は、ISの敵のように扱われることがある。
モウラド氏は、1991年からマルエリアン修道院の再建に取り組んでいた。彼は地元のキリスト教徒とイスラム教徒の住民たちの和解を助ける場所として、同修道院を使用していた。
モウラド氏は以前、イタリア人イエズス会士パオロ・ダログリオ神父によって設立されたマルムーサ修道院で、修道士として奉仕していたことがある。ダログリオ氏は現在、ISの事実上の首都となっているラッカに行った2013年7月から行方不明となっている。