桜美林大学エクステンションセンター(神奈川県相模原市)では、毎年春と秋に、「桜美林大学オープンカレッジ」と題した生涯学習講座を市民に広く開講している。文化・教養講座、健康・心理講座、語学講座、市民講座が開設され、市民講座の場合は1日単位から気軽に参加することができる。「大学は市民に何を提供できるか」という問題意識に対する一つの応答として、大学内の講師による幅広い分野の講義が提供されている。内容は毎回一新されるが、キリスト教主義である同大学では、文化・教養講座の「聖書入門」(柳原鐵太郎名誉教授)が恒例となっているなど、大学の特色を生かしたキリスト教関係講座が開かれることが一つの特徴となっている。
今期は、「聖書入門」のほかに、全8講座の市民講座の中で「世界の不思議なキリスト教」(桃井和馬特任教授)「讃美歌から唱歌へ〜近代日本における『歌』との出会い〜」(植木紀夫教授)が用意された。8日、町田キャンパス(東京都町田市)で開かれた「世界の不思議なキリスト教」には、約30人の参加者が集まった。キリスト教は、ギリシャ・ローマ世界を経て、地中海全域、そして全世界へと広まっていき、世界各地でさまざまな形でキリスト教が信仰されている。世界140カ国を旅した写真家の桃井氏は、実際に見て触れたキリスト教文化を、写真と共に紹介。キリスト教にもいろいろなキリスト教があり、私たちが知っているキリスト教がいかに日本だけのものであるのかを話した。
「クリスチャンの人ばかりが参加すると思っていた」という桃井氏の予想に反し、参加者のうちでクリスチャンだと手を挙げたのはわずか2人。クリスチャンではない人々のキリスト教への関心の高さが感じられる。実際、講座の最後の質疑応答では、「キリスト教のことは全然分からないので、カトリックもプロテスタントも全部一緒だという認識があったが、相当違うのだということが感じられた。世界、日本でのそれぞれの宗教人口の割合はどうなっているのか」という非常に初歩的な質問が寄せられた。また、講座終了後に、大和市から友人と参加したという50代女性に感想を聞くと、「市民講座を全て受講するが、この講座が一番楽しみだった。キリスト教が題材になっている映画が好きなので、キリスト教自体を知りたいと思った」と話してくれた。
桃井氏の講義は、クリスチャンでない人はもちろん、聖書を読んでいるクリスチャンが聞いたら「もっと面白いと思える」内容だった。「キリスト教を理解しなくては、世界情勢を正しく理解できない」と語る桃井氏は、今年4月にイラクに入った時の映像を見せながら、2003年のイラク戦争の際、2つの米軍基地がイラクに置かれたことに触れ、「一つは首都のバグダットに置かれたが、もう一つがウルという場所に置かれたのはなぜか」と参加者に問い掛けた。「ウルは、旧約聖書にアブラハムの出身地であると書かれており、イラクにおける京都のような歴史的に非常に重要な土地。そこに基地を作ることは、新しい為政者の象徴となる」と説明し、「聖書は深みにはまるとどんどんはまっていく面白さがある」と話した。「しゃべる写真家」と呼ばれる桃井氏が、巧みに声色を変えながら繰り広げる、世界を股にかけたキリスト教の壮大な歴史に、参加者は「本当に不思議だ」と、新鮮な驚きをもって熱心に耳を傾けていた。
「桜美林大学オープンカレッジ」の詳細・問い合わせは、桜美林大学エクステンションセンター(電話:042・704・7075、ホームページ)まで。