キリスト教精神に基づいて国際的な視点から社会を洞察し、他者と共に生きる人間形成の場としての働きを進める公益財団法人早稲田奉仕園が、連続講座「今だから知りたいイスラームと世界の動き」を全5回にわたって開催する。その第1回「はじめて学ぶイスラーム~ムハンマドの生涯とイスラム教」が13日、早稲田奉仕園リバティホール(東京都新宿区)で行われた。早稲田大学イスラーム地域研究機構次席研究員の吉村武典氏が講師として招かれ、イスラム教の基礎について講義した。
吉村氏は、6世紀頃のアラビア半島周辺の社会的情勢、そこに住むアラブ人の民族意識など、イスラム教発祥の歴史的背景を述べた上で、イスラム教の開祖である預言者ムハンマドの生涯の概観を説明。イスラム教がどんな教えを持つ宗教なのかが分かるように、ユダヤ教やキリスト教との関係性についても触れながら、イスラム教の基本的な内容を講義した。また吉村氏は、ムハンマドの伝記として広く読まれている『預言者ムハンマド伝1』(イブン・イスハーク著、岩波書店)に記されているエピソードを数多く紹介し、ムハンマドの人物像を生き生きと浮かび上がらせて参加者の関心をそそった。
この講座の企画者で、司会を務めた小池善氏は、「イスラームに関しては、日本でもハラル食などが注目を集めているが、その一方で、過激派組織による事件、欧州におけるイスラモフォビア(イスラム恐怖症)など、イスラームをめぐる溝があることも確かに感じられる。知らないから遠ざかるのではなく、理解するために近づいていくことが求められているのでは」と企画の趣旨について話した。「緩やかにつながるさまざまな切り口から、多角的に楽しみながらイスラームについてあらためて考えてみませんか」と次回以降の参加を呼び掛けた。
講座終了後、参加した20代の男子学生に話を聞くと、「自分の大学でもハラル食の弁当が販売されブームになっているが、ムスリム(イスラム教の男性)やムスリマ(イスラム教の女性)の人には会ったことがなく、実際のイスラームについてはほとんど知らないので参加した。ジェンダー論を学んでいるので、イスラームが女子の権利を認めていることを知り、イメージとギャップがあって特に印象に残った」と話した。
また、20代後半の社会人女性は、「クリスチャンホームで育ったので、キリスト教と比較しながら話を聞いた。神が唯一であるという考え方は同じなのに、政教一致を理想的な社会とする考え方を持っていて、宗教が社会全体を巻き込んでいる様子がとても面白いと思った」と感想を語った。
次回は、27日(月)午後7時から、「イスラームとテロリズム~クルアーンに見る『ジハード』と平和の捉え方」というテーマで、慶応義塾大学総合政策学部の奥田敦教授を講師に開催される。講座への参加は要申し込み。参加費(一般1000円、学生・賛助会員500円)は毎回当日払い。詳細や申し込み、問い合わせはこちら。