英国の女性児童文学作家、ジェラルディン・マコックラン著『エッサイの木 クリスマスまでの24のお話』(沢知恵訳、池谷陽子絵、日本キリスト教団出版局、2014年9月)が、キリスト教出版販売協会が主催する「キリスト教本屋大賞2015」を受賞した。全国のキリスト教書店員が選んだ「いちばん読んでほしい本」として、各キリスト教書店の店頭に並べられ、フェアが開催されている。
第2位は、バーバラ・ブラウン・テーラー著『天の国の種 マタイによる福音書を歩いて』(平野克己・古本みさ訳、キリスト新聞社、2014年3月)で、第3位は、鈴木崇巨(たかひろ)著『礼拝の祈り 手引きと例文』(教文館、2014年9月)だった。
同賞は、低迷する出版業界を少しでも活性化させようと、2011年に始まった。同協会に加盟する全国のキリスト教書店が、過去1年間に刊行された本の中から「売りたい・お勧めの本」を投票形式で選ぶ。一次選考では、店員の投票によって10点のノミネート作品が選ばれ、二次選考を経て、大賞から10位までが決定する。
今年の大賞作品は、教会堂で木の板を彫る大工のおじいさんが、そこに現れた男の子に語る天地創造からクリスマスまでの24の話がまとめられた一冊で、小学生でも読むことができる分かりやすい内容になっている。仙台キリスト教書店の黒田忠さんは、キリスト教書評誌『本のひろば』の中で、「おじいさんは、聖書のお話を、まるでその場にいたかのように語りかけます。シンガーソングライター・沢知恵さんの訳と池谷陽子さんの絵がとてもやさしい気持ちにしてくれます。子供が読んでも大人が読んでも楽しく読める一冊です」と、推薦の理由をコメントしている。
受賞に寄せて、翻訳をしたシンガーソングライターの沢知恵さんは「訳しながら、旧約聖書って、なんておもしろいんだろう、と目からウロコがおちました。これでもかこれでもかの試練を経てなお神さまへの信仰を貫いた人たちの物語に、心から感動しました。イエスさまのご降誕物語も、これほどまでにドラマチックなものは、読んだことがありません。おとなも子どもも、ぜひ読んでみてください」とコメントしている。
また、挿絵を担当した絵本作家の池谷陽子さんは、「主人公のバターフィールドじいさんと一緒にコツコツと木を彫っている気持ちになりました。そして遠い旧約聖書の時代に迷い込み、その中でどんなにイエス様の誕生を待ち望んだことでしょう。完成したレリーフをアマニ油で磨く場面では、私も木と油の香りに包まれて喜びに満ちていました。大賞をいただき、エッサイの木のてっぺんの星はいっそう輝いています」と喜びのコメントを寄せている。
過去の大賞には、第1回に日野原重明著『愛とゆるし』(教文館、2010年)、第2回に山浦玄嗣(はるつぐ)著『ガリラヤのイェシュー』(イーピックス出版、2011年)、第3回に渡辺和子著『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎、2012年)、第4回に八木谷涼子著『もっと教会を行きやすくする本』(キリスト新聞社、2013年)がそれぞれ選ばれている。海外作家による作品、児童向けの作品が大賞を受賞するのは今回が初めて。
同賞が対象とする作品は、神学書・信仰書などの分野は問わず、「書店員がとにかく読者にお勧めしたい本」という基準のみが設けられている。
今年は、4位には、プロテスタントでは聖書の次に多く読まれているといわれる不朽の名作、ジョン・バニヤン著『天路歴程 天の都を目ざして』(キリスト新聞社、2014年12月)が、7位には、昨年話題になったNHKの連続テレビ小説「花子とアン」に関連した、宮葉子著『アンが愛した聖書のことば 「赤毛のアン」を大人読み』(フォレストブック、2014年5月)が、8位には、桃井和馬氏の写真と『讃美歌21』の言葉が収められた『フォト・ソングブック 美しい大地は』(日本キリスト教団出版局、2014年10月)が入賞しており、そのジャンルの幅広さが分かる。
「キリスト教本屋大賞2015」の詳細は、随時フェイスブックで公開されている。また、大賞の『エッサイの木 クリスマスまでの24のお話』については、受賞を記念して、日本キリスト教団出版局のホームページで特別案内ページが開設されている。