キリスト教人道支援団体「サマリタンズ・パース」は、同団体のプロジェクトである「オペレーション・クリスマス・チャイルド」(OCC)を通して、戦争や飢餓、貧困に直面する地域などでたくましく生きる世界中の子どもたちに、シューボックス(靴箱)いっぱいに詰まった贈り物を届け、伝道につなげる働きを毎年行っている。昨年度は、世界中から1044万333箱のシューボックスが集められ、112カ国の子どもたちに配布された。20年以上続くこのプロジェクトは、日本では東日本大震災をきっかけに始まり、今年で4年目。11月の集荷期間に向けて、夏物が安く購入できるこの時期から呼び掛けが行われている。日本で集められたシューズボックスは、昨年同様、フィリピンの子どもたちに贈られる。
このプロジェクトは、贈り物を渡して終わりというのではない。受け取った子どもたちは、12週間の聖書の学び「The Greatest Journey」(TGJ)に招待される。天地創造から人間の堕落、そしてイエス・キリストの救いを知り、クリスチャンとしての生活、伝道を、テキストやグループに分かれての実践から学ぶ。昨年だけでも、190万人の子どもたちがこの聖書の学びを修了している。
子どもたちだけではなく、現場で教師を務める各教会の奉仕者に対しても、研修が行われる。研修では、このプロジェクトのビジョンやシューズボックスの贈り手の思いを共有し、子どもたちの名簿作りなどの具体的な方法を習得する。
昨年初めてシューボックスを受け取ったフィリピンの教会の一つである、「イエス我らの偉大な羊飼い教会(Jesus Our Great Shepherd Church)」で宣教師として仕える赤嶺艶子さんは、「特に若い奉仕者や訓練を受けたことがない者には、明確なガイドラインが与えられ、これからの働きの土台となるものです。これは子どもたちだけではなく、実際に現場で教師として教え、伝道する私たちにとっても大きな恵みの時でした」と振り返る。
沖縄出身で、ガリラヤ宣教会から派遣されている赤嶺さんは、マニラから2時間ほど離れたリザル州モンタルバンにある同教会で、スラム街やごみの載積所から強制移住させられた貧しい人々に福音を伝え、子どもたちを支援する活動をしている。OCCの働きを手伝っている友人の牧師から話を受けたのをきっかけに、軽い気持ちでOCCに参加したという。声を掛けた姉妹教会の牧師たちと一緒に、まずはOCCの働きの説明を聞くことから始まり、約1カ月間、週に1度、朝8時から夕方までしっかり研修を受けた。現地の教職者たちは、忙しい身でありながらスケジュールを調整し、一人でも多くの子どもたちがシューズボックスを受け取れるように、また子どもたちとイエス・キリストとの出会いの機会になるようにと祈りながら、1日も欠かさず研修に参加したという。
研修を完了し、実際に200個のシューズボックスを受け取り、子どもたちに配布したときには、喜びと感謝の気持ちでいっぱいになった、と赤嶺さんは話す。教師たちは、十分に時間をかけて備えてきたため、自信を持って子どもたちに接することができた。教師との関わりや、TGJの学びを通して、多くの子どもたちがイエス・キリストと出会い、今も良い関係を保ち続けているという。また、このプロジェクトが行われた約3カ月の間に、子どもたちに付き添ってきた母親たちも新たに教会に足を運ぶようになった。子どもたちと共に福音を聞き、子どもたちが聖句を暗唱するのを手伝うことで、母親たちにも聖書の言葉が届き始めている。
赤嶺さんは、「OCCは、結果的に子どもたちだけではなく、地域全体にも強いインパクトを与えることができました。シューズボックスの中には素敵なギフトばかりが入っていて、開いたときの子どもたちの歓声を忘れることができません。子どもたちのあの歓喜の声は神様への賛美です。お母さん方も、子どもたちの喜ぶ姿に心開かれたと思います。貧しく、生活が苦しい強制移住地区を神様が覚えてくださっている。シューボックスを通して、私たちの教会や姉妹教会も、地域の子どもたちに時間と労力を注ぎ、神様の愛を表す機会を与えられました。シューボックスは、フィリピンの地で多くの信仰の種をまいています」と報告している。
2015年度のシューボックスの受付期間は、11月17日から21日まで。詳細は、サマリタンズ・パースのウェブサイトで。