米国の市民ジャーナリストらによる非営利団体「医療向上センター」(CMP)は21日、米国の非営利団体「全米家族計画連盟」(PPFA)の医長が中絶胎児の体の部分の価格を交渉する様子と、「より破壊の少ない(中絶の)技術」を、おとりの架空企業の担当者に提案する様子を収めた2本目の潜伏調査動画を公開した。
新しく公開された動画は今年2月6日に撮影されたもので、カリフォルニア州にあるPPFAパサデナ・サンガブリエル支部のメアリー・ガッター医長が、おとり企業の担当者と胎児の体の部分の価格交渉をしている様子が捉えられている。また、ガッター氏はこの中で、胎児の神経と臓器を壊さず取り出すために、妊娠第1三半期(妊娠13週6日まで)の女性に通常とは異なる中絶技術を使うことも提案した。
「私は中絶を担当するイアン医師に、そっくりそのままの標本を入手するため、その週数の胎児に手動真空吸引法を使うよう頼むこともやぶさかではありません」とガッター氏。価格交渉の間、ガッター氏は「ご存じの通り、交渉の場で最初に金額を話してしまう人は(交渉に)負けるものなのよね」などとも述べている。
価格交渉の後、ガッター氏は「標本」に75ドル(約9000円)を提示した。おとり企業の担当者を演じる俳優は、それは「安過ぎ」だとハッパをかけ、ガッター氏は最終的に100ドル(1万2000円)を提示しかけるが、胎児の体の部分それぞれの価格を決定しているPPFAの同僚と相談の上、さらに高額になる可能性もあると述べた。
「金額について話して合ってからもう随分たつわ。他の人がいくら得ているか確認させてください。もしそれが妥当な額ならいいでしょうし、もしまだ少ないのでしたら、値上げしますよ。私、ランボルギーニ(の高級車)が欲しいの」と、ガッター氏は冗談も話した。
CMPは新しく公開した動画の冒頭で、PPFAのCEOであるセシール・リチャーズ氏(民主党出身の元テキサス州知事、故アン・リチャーズ氏の娘)が最初の動画に対し、PPFAは組織の寄付から利益を受けていないと語る場面を流した。
14日に公開された最初の動画では、PPFAの医療サービス専務理事であるデボラ・ヌカトーラ医師が、中絶胎児の体の部分を有料で提供することを提案する様子が捉えられている。
このCMPの覆面調査のプロジェクトリーダーであるデイビッド・ダレイデン氏は声明で、「PPFAの指導者のトップは中絶胎児の体の部分を取り、それによって支払いを受けていることを認めました。PPFAが唯一否定したのは胎児の体から金銭を得ることでしたが、それは真っ赤なうそで、CMPがPPFAの経営実態を明らかにするにつれ、ますます薄弱なものとなっています」と述べた。
CMPは、米国内の7つの州政府が、また米連邦下院の3つの委員会が中絶胎児の臓器売買をめぐって、PPFAの調査を始めたと言及した。
反中絶団体「リブ・アクション」のリラ・ローズ代表は、21日に公開された動画を見て、「野蛮」だと批判した。
「最新の動画は、PPFAのビジネスの野蛮な現実をさらに映し出しています。中絶を提供した後、PPFAはさらに殺したばかりの子どもの体の部分を採取するという、ますます地に堕ちた所業を行っています」とローズ氏は述べた。
PPFAは、「PPFAと共に立つキャンペーン(I Stand with PPFA Campaign)」の中でこの動画に応答している。その中でPPFAは、「またしても、中絶反対活動家がPPFAの医師、看護師、患者を偽りをもって告発しています。そしてまたしても、その政治団体がこの告発をもって、中絶の禁止、ヘルス・センターの閉鎖、女性をケアから切り離すという、その危険な主張を推進する言い訳にしています」と述べている。
PPFAは他の声明で、違法行為を行ったのはCMPだと主張している。PPFAは20日に米下院エネルギー商業委員会に書簡を送り、最初の動画に登場したヌカトーラ氏が31日に予定されているPPFAについての証人喚問で証言しないことを明らかにした。
カトリックの反中絶団体 「プリースト・フォー・ライフ」の代表者であるフランク・パボーン神父は、声明で新しい動画について触れ、「これはこれから4~5週間の間に公開される予定の一連の動画の2本目で、PPFAがどれほど道徳的に壊れているかを示すものです。プリースト・フォー・ライフは、PPFAの職員が州法や連邦法に違反したかについてのさらなる調査の面でも、議会のメンバーを最も高いレベルで支援します」と述べた。