上智大学(東京都千代田区)は今月、新たな研究機関として「国際関係研究所」を設立した。8日には、開設記念のワークショップ「変容するアジア太平洋と日本の安全保障政策」を開催し、学内外から約150人が参加した。同大が公式ホームページで伝えた。
新設された国際関係研究所は、国際政治学と安全保障に関わる研究を両軸にし、国内外の研究機関とも積極的な連携を進めていくとしている。ワークショップでは、同研究所の総括代表を務める前駐米大使の藤崎一郎特別招聘教授が、国際政治や安全保障を専門とする研究所が同大に初めて設立したことを受け、急速なグローバル化で国際情勢が大きく変化する中、同研究所が国内外の研究機関をつなぐハブ的な役割となることを期待していると話した。
ワークショップでは他にも、同研究所所員の教員によるパネル討議が行われ、当面の研究活動について、「アジア太平洋のガバナンス・システム2020―安全保障・金融秩序再編と日本―」を研究テーマに掲げ、アジアの安全保障に焦点を当てた研究を進めていく予定だと報告した。また、慶應義塾大学や東京大学など日本の複数の大学が加盟する研究組織「日米研究インスティチュート」(USJI、本部:米ワシントン)を通じて、研究成果や活動内容について発信していくという。
同研究所は、研究面だけではなく教育活動にも力を注いでいる。国連関係者など、国内外の識者を招いたセミナーやワークショップなども開き、国際政治や安全保障に興味のある学生であれば、学部学科を問わず参加できる企画を一年を通して実施していくという。同大13号館1階に新たに設置されるオフィスには、教員と学生が気軽に交流できるスペースも設けられる予定だ。
同研究所所長の樋渡由美教授(総合グローバル学部)は、今後の活動を通じて、同研究所の研究基盤を確固たるものとし、その存在感を高めていきたいと話した。また、学生との緊密なコミュニケーションを重視し、議論を重ねることで知的好奇心に応えていき、研究成果を学生に還元していきたいとしている。「上智大学は研究か教育か、ではなく、研究も教育も、という大学です」という高祖敏明・同大理事長の言葉を紹介し、「教員も学生も、広い視野を持ちつつ、政治、経済、安全保障について深く考え、一緒に議論する研究所にしていきたい」と抱負を語った。